「聖人が描いたつまらない漫画より、底意地が悪い人が描いた面白い漫画」週刊少年ジャンプ漫画賞公式XのQ&Aが話題に
「週刊少年ジャンプ」に関連する漫画賞全般の情報を発信するXアカウント「少年ジャンプ漫画賞」(@jump_mangasho)が、質問箱サービス「mond」を通じて、漫画家志望者の疑問に答えている。漫画の上達法や持ち込み作品の条件など、細かな質問も多く寄せられるなかで、「漫画を描く目的」についての話題が注目を集めた。
質問の概要は以下の通りだ。最初は「誰かに何かを伝えたい」という切実な思いで漫画を描き始めたが、いつの間にか「漫画で有名になってお金を稼いだら将来安泰」「自分を自慢できるような人間にしたい」など、自分のことばかり考えてしまう状態に。「こんな人間が漫画を描いても、何も伝わらない気がします。どうしたら良いでしょうか」と、自身の内面を正直に吐露した内容だった。
質問者は「漫画に人生を救われたことがある」としており、漫画に対して誠実に向き合いたい、という気持ちが強いようだ。こうした志の高い漫画家志望者の存在は漫画ファンにとって心強いところだが、「ジャンプ漫画賞」の回答は、「『お金持ちになりたい。チヤホヤされたい。好きな作家と対談したい』など、自分の燃料になるならどんな俗な理由でも良いと思います」というものだった。
これはあらゆる創作や表現に通じそうなことだが、「聖人が描いた『つまらない漫画』より、底意地が悪い人が描いた『面白い漫画』です」と、回答は続く。そして「もし心の中の天使と悪魔がいるなら、より強い方に心を任せた方が馬力が出ますし、別に『金持ちになりたいけど人を勇気づけたい』など天使と悪魔が共存しても良いと思います」と締めくくられた。
この回答に、『アイシールド21』や『Dr.STONE』、また『トリリオンゲーム』という大ヒット作の原作を手掛けてきた漫画家の稲垣理一郎氏は、「『心の中の天使と悪魔がいるなら、より強い方に心を任せた方が馬力が出る』いい言葉だな。クリエイター向けの。」と反応。もっとも、実生活において心を「悪魔」に任せてはいけないのは当然のことで、稲垣氏は「あ。元ポスト見ればわかるけど作品内の話だからね。」と補足していた。
一作の漫画を描き上げるのは相当な熱量が必要なことで、確かに「自分のため」だけでも、「人のため」だけでもモチベーションの維持は難しいのかもしれない。また、俗な欲求にフタをしてしまうと、創作に向かうワクワクした気持ちも失われてしまいそうだ。自分の欲求と正面から向き合い、それを燃料として、高いエネルギーを作品にぶつける。少なくとも「ジャンプ漫画賞」は、そんな作品を求めているようだ。