【漫画】孤独を映画で埋める少年、共感してくれた可愛い先輩JKになぜ絶望?『リカ先輩の夢を見る』がスゴイ
――本作の反響はいかがですか?
小骨トモ(以下、小骨):Xで多くの方に読んでいただけて驚きました。あと本作を読んで、トークショーに参加してくださった方もいたり……。とても嬉しかったです。
――本作の着想や制作のきっかけについて教えてください
小骨:学生時代に死ぬほど暗かった私が学校以外で行く場所といえば、アニメイトや古本屋、CD屋、映画館くらいなものでした。その選択肢の中から無理やり考えて、しかも恋自体の経験も少ないですし……。もちろん本作に限ったことではないのですが、本当に大変でした。
――制作にあたり意識した点、自身の経験を反映した部分などは?
小骨:引き出しが少ないこともあり、自分の経験しか描けないんです。小林くんと同じく表現に救われてきたので、そういう作品に出会うと「これは私の為の作品!」と今でも思いがちで。一方でリカ先輩みたく、好きなバンドマンのエッセイや作家のあとがきを隅々まで読み、出てくる本や音楽などをメモして探しまわる時代もありました。
学生の時は特にそうでしたね。「すごい人に精神的に近づきたい、理解したい!」という感じ。振り返ってみると、私の場合は両方とも孤独を紛らわす行為だったなと。今も変わってなくて、やれやれと思います。
――クライマックスに出てくる「僕ら」「お前ら」と言った複数系の代名詞も印象に残りました。
小骨:小林くんはクラスメイトたちを嫌悪して「僕だけは違う!」、「ひとりでも平気!」と思っていますが、結局は他人を求めてしまうんですね。そして無意識的に自分と似た部分を探して感情移入し、勝手に仲間にしてしまう。「大勢を嫌悪しながらも、その大勢の中に自分もいる」という「どうにもならなさ」が伝わったらいいなと。
――小骨さんの漫画表現として、眼鏡や目に映る風景の描写が印象的でした。
小骨:小林くんにとってのリカ先輩は映画の世界と地続き。いわば彼の目、眼鏡越しに映るリカ先輩は小林くんの自主製作映画なのです。創作の世界のリカ先輩は優しくて可愛く笑っている完璧な人、でも現実はそう上手くいかんぞと。そんな雰囲気を絵で表現したいなと思いました。
――本作を始めとした4作が収録された単行本『それでも天使のままで』のコンセプトもお聞かせください。
小骨:コンセプトは「初恋」。前作『神様お願い』が内にこもった作品が多かったのもあり、本作は縛りとして強制的にすべて恋の話としました。
――作品のインスピレーションを得るのはどういったところから?
小骨:人と会った時です。特に普段あんまり頻繁に会わない親戚が集まる法事の時や、編集さんが呼んでくれた漫画家さんとの飲み会ですね。この間も祖母の法事があって、集まった時に面白いやりとりがあったんです。
いとこの子どもが小学校の体育の授業が嫌いで、サボってしまうそうなんですよ。その子に対して、いとこや親戚たちは「あんなに楽しいのに」とか「みんな出てるんだから!」、「いい子だから今度は行くよね?」と言っていて。実は私も体育嫌いだったので「あんなもんサボっていいだろ!」と内心は思っていたんです。
――なるほど。
小骨:ただSNSとは違い、親戚たちは根が優しい人なんですね。だから「クラスで浮かないか心配しているんだろうな…」とか「仕事の時、学校から連絡きたらキツいだろうな」、「でも逃げ場をふさいで、さらいにしんどくさせてるんじゃ?」など考えてました。
結局「あんなもんサボっていいだろ!」と親戚にひとりはいる、フラフラしてる怪しいおじさん、おばさんの立場で口を挟むのですが……。でもその「1度考える」のが大事かなと思うんですよ。そのもやもやは一言で消化出来ないので、あとは漫画に描くしかないなと。
――憧れ、影響を受けた作品や作家はいますか。
小骨:多すぎますね。でも、やっぱり山本直樹先生。
――作家としての展望、なりたい作家像を教えてください。
小骨:特にはないですが、私は人に嫌われるのが怖いので「これは描いちゃ駄目だ!」とか「これは人として……」という感じで無意識にストップをかける癖があるんです。漫画だから何描いても自由なはずなのに。だからそれをひとつずつ消せるように挑戦していければ。
あとは編集さんや親、友達とか、いつも私に手を焼いてる人に恩返しが出来るように売れっ子作家になれたらいいなとも思ってはいます。でも自分的には全然なれる気しないです(笑)。なれるのか……。でも、頑張ります。
■書籍情報
『それでも天使のままで』
双葉社より発売中
www.amazon.co.jp/dp/4575859737
小骨トモ著『神様お願い』
双葉社より発売中
www.amazon.co.jp/dp/B09N6X1DBB