『シティーハンター』涙なしでは読めない? 冴羽獠の心を最も動かした“美女の依頼”を考察

恋人はシティーハンターの巻

 一般の依頼人が、殺しの世界のNo.1であるシティ―ハンターに仕事を依頼する方法は一つしかない(野上冴子の知り合いであれば別だが……)。新宿駅の伝言板に「XYZ」という暗号を書いて知らせる、というものだ。そのため、正規の依頼に混じって、彼らの素性を暴こうとする人物からの依頼が書かれるケースもある。

 「恋人はシティーハンターの巻」は、シティーハンターに憧れ、密着取材を行うため探し続けている女性カメラマン冬野葉子の依頼エピソードだ。街中でトラブルに巻き込まれた葉子を救い、その際彼女に顔を見られてしまった冴羽たちは、「シティーハンターの弟妹」であると名乗り彼女のシティーハンター探しを諦めさせようと様々な説得を試みる。しかし、なんとしてでもシティーハンターと会いたい葉子は、あるトラブルを利用し、むしろシティーハンターが自分を助けに来てくれるよう仕掛けるのだ。

 作品当初、冴羽はあくまでも「シティーハンターの弟」設定で彼女を救助しに行くのだが、邪魔をするなと突き返された上に、「シティーハンターに会うためなら命だって賭けるわ‼️」と怒りの言葉さえ投げつけられてしまう。彼女の本気度を知った冴羽は、ヤクザ組織·雲竜会を利用して銃撃戦を行い、「殺しの世界のNo.1」としての実力と裏社会での仕事ぶりを彼女に見せることにする。

 このエピソードの見どころは、ラストの冴羽と葉子とのツーショット撮影だ。雲竜会との銃撃戦を見て思い知り、シティーハンターの取材を止める決意した葉子。彼女は、冴羽が新宿でよく行く場所を一緒に訪れ最後に記念写真を撮らせてもらえないかと提案する。あくまで「シティーハンターの弟」としてギャグなども踏まえながら振る舞っていた作品前半の冴羽の様子と、ラストにかけてのシティーハンターとしての表情や振る舞い方などのコントラストは、作品全体にも共通する大きな魅力だ。コミカルさと、THE少年漫画なハードボイルドさ、そんな作品自体の見どころを体現しているエピソードなのだ。

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