「新紙幣」新千円札肖像の北里柴三郎、猫ブームの火付け役となった理由といえば?

photo:erichan(unsplash)

■北里柴三郎、何をした人?

  7月3日から新札の発行が始まった。SNSでは既に手に入れたという人が写真をUPしている。デザインについては発行前は「数字のフォントがダサい」など賛否両論あったが、手にした人からは「意外といい」「きれい」などのコメントもあり、おおむね好評のようである。

  さて、お札のイメージを決定づけるのが、表面に描かれた肖像だ。千円札は野口英世から北里柴三郎にバトンタッチしたが、「知らない」という人もいるようである。しかし、北里は伝染病研究所や北里大学の設立に携わり、日本の感染症研究の第一人者として、日本の近代医学の父とも讃えられる偉大な人物なのである。

  主要な業績としては、1890年に破傷風とジフテリアの血清療法の開発をした点、そして多くの弟子を育てた教育者としての一面が有名だ。野口英世も北里の教えを受けた存在で、親交があった。研究者としての知名度や業績への評価は存命時より高く、1901年、第1回のノーベル生理学・医学賞の候補にも挙がったほどである。

  北里はノーベル賞を受賞できなかったものの、北里大学で研究した大村智が2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞している。北里の情熱は時代を超えて継承されているといえるだろう。

『北里柴三郎と千円札物語』(ほるぷ出版)

■猫ブームを仕掛ける

  そんな北里の知られざる業績の一つに、「猫ブームを仕掛けた」ことが挙げられる。北里は伝染病のペストの研究で知られる。日本もそうだが、世界的にも現在と比べると衛生状態が芳しくなく、人々は伝染病の恐怖に怯えていた。そして、伝染病の原因を探ることは、当時の医学者の重要な研究テーマであったのだ。

  1894年に香港でペストが大流行した際、北里は現地に赴いて調査を行った。その結果、ペストの原因がペスト菌であることを見出したのであった。北里はペスト菌を媒介するのはネズミであることも見出し、それならば、ネズミを駆逐すれば予防につながるのではないかと考えたのである。ネズミの天敵と言えば、そう、猫である。

  その後、ペスト菌が日本にも入ってきてしまい、北里は仲間たちと一緒に感染症を食い止めるべく啓発に努めていく。その一環として、北里はネズミを駆除してくれる動物として、家で猫を飼いましょうと呼びかけたのだ。北里柴三郎記念博物館のホームページによると、北里はネズミを捕るのが上手な猫の調査までしていたそうである。

  これをきっかけに、日本では猫を飼う人が続出したといわれる。現在の愛玩動物としての猫とはちょっと異なるものの、これを機に、人々にとって猫が一層身近な存在になったことは間違いないだろう。

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