【漫画】問題が解けるまで獣化が解けない呪い!? 「数学オリンピック」の難問を解説するSNS漫画がスゴい

設問解説に「ストーリー」を加えた背景

――どんな経緯で『こんな始まり方ですが一応数学オリンピック予選2024解説漫画です』を制作したのですか?

きつねねね:もともと『軽率に数学漫画シリーズ』という、男の子が小さい動物と一緒に数学を楽しむ漫画を定期的に描いていました。数学をおもしろいと感じることが多く、「その気持ちをわかりやすく漫画で伝えたい」という思いから描き始めました。当初はXなどでの反響は芳しくなかったのですが、昨年アップした『数学オリンピック』(以下、数オリ)の予選2023年解説漫画が1000以上のいいねを数えたことを受け、今年も同様の解説漫画を制作することを決めました。

――主人公をネズミに変身させた狙いは?

きつねねね:1ページ目からインパクトを出すためです。昨年は“数オリ2023予選通過ボーダー取れるまで出られない部屋”という設定で、「その状況のシュールさが反響に繋がった」と考えました。ですので、今年も“数オリの問題を解かないといけない状況”を作ろうと思いました。また、人間が獣化したり変身したりする話が元々好きなので、今回は主人公をネズミ化させようと決めました。

――ただ単に登場人物が問題に取り組むのではなく、“問題を解いたら元の姿に戻る”というストーリーがありましたね。

きつねねね:より多くの人に読んでもらえるようにストーリーを持たせました。数オリの問題の解答・解説は多くの人が作成しており、正直なところ解説部分に新規性はありません。しかし、例えばYouTuberが受験数学を解く動画は解説が無くとも再生されるように、“解いてる人を見るだけ”でも面白さがあります。そこでこの漫画では解説のみではない要素としてストーリーを加えました。

――確かに問題内容も解説もわからないことだらけでしたが、最後まで楽しく読むことができました。

きつねねね:この構図の強みとして、主人公が問題を理解さえしていればストーリーは進むため、読者は解説を理解しなくても読むことができます。解説を理解するために読むのではなく、物語を見るために読むことができるからです。ターゲット層が“数オリを解ける人”だけではなく、“ただ面白い数学を見たい人”も加わえられたと思っています。とはいえ、このことは後付けの部分も多いのですが、私は本作が伸びた理由をこう解釈しています。

数学の面白さを様々な角度から伝えるため

――各問題をわかりやすく読んでもらうために、意識したことは何ですか?

きつねねね:もともと解説の理解しやすさより、問題や解き方の面白さを伝えることを強く意識して描きました。セリフ選びとしては「ギリギリアウトな石の個数」「nをイジる」「二乗で爆発」といった、実際の数学の試験や論文では使われない、ラフな言葉を使うことを意識しました。もちろん、数学は厳密に丁寧に行うべきです。ただ、厳密にすればするほど「何を言いたいのか?」といういわゆる“お気持ち”の部分が伝わりにくくなります。漫画の口語で解説を行えるという利点を活かし、思う存分“お気持ち”を描いたところがこだわりです。

――2問目を見て「開催年の数字が入った問題が恒例になっている」ということを知りました。本作では描かれていないものの恒例となっていることは他にもありますか?

きつねねね:これは誰に言ってもあまり共感されないのですが、大問10番は高い確率で良問が出題されていると思っています。

――「解説描くのがむずいからです」という理由から幾何の3問目は省略していましたが、実際に描くとなると何ページくらいが必要になりそうでしたか?

きつねねね:3問目は“方べきの定理”を用いる問題でした。ページ数がかかるからというよりは、図を描くことやお気持ちの説明が難しいと感じて飛ばしました。また、もっとメタ的な理由を言うと、10番まで解説をしたかったのですが10問も解説すると大変なので、間引くために飛ばしています。

――最後に今後はどのように漫画制作を展開していく予定ですか?

きつねねね:展望としては、今後も数学オリンピック解説漫画の制作を続けるとともに、受験数学や大学数学の分野にも挑戦したいです。数学の面白さを様々な角度から伝えられるよう、作品の幅を広げていきたいです。また、今年の夏東京で開催されるコミックマーケットにもし当選すれば数学漫画をいくつか販売する予定です。もしよければぜひお立ち寄りください!

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