「ついに終わりか……」『進撃の巨人』『呪術廻戦』に通ずる“果てしない転落”の物語『宝石の国』完結
絶望を乗り越えた先にあるものは?
宝石は通常、2人組みで行動することが定められており、たんなる仕事仲間の関係を超えた“パートナー”としての絆を結んでいるのが特徴だ。そこにあるのは愛情だけではなく、いろいろな負の感情が含まれている。ボルツに対する鬱屈としたコンプレックスを秘めたダイヤモンド、パパラチアの治療に依存しているルチルなど、宝石たちの関係は複雑に入り組んでいて、だからこそ美しい。
そんななかで、フォスはどこまでいっても本質的には1人だ。次々とパートナー候補が現れるのだが、誰もが何らかの形でフォスのもとを去っていく。同じく孤独に生きざるを得ない特殊体質のシンシャとは、通じ合いそうになるのだが、そのたびにすれ違いが巻き起こる。
もちろん周囲からある程度のやさしさを向けられることはあるが、誰も本気でフォスと向き合い、フォスを求めようとはしていない。魂のパートナーが存在せず、強烈な愛情や負の感情を向けられることがないのだ。
そしてそれにもかかわらず、同作の世界においてはフォスこそがもっとも特別で、誰にも替えが効かない存在となっていく。誰の特別でもないが、みんなの特別になる……という展開は、あまりにも皮肉に満ちている。非業の運命を背負った主人公が出てくる作品のなかでも、ここまで徹底的な孤独が描写されたのは『宝石の国』くらいではないだろうか。
なぜ作者はそのような境遇にフォスを追い込んでいったのか。そして絶望的な展開の果てには、救済が待っているのか……。物語は宇宙規模のスケールで進み、誰にも予想できない領域に突入していく。実際に作品を読んで、その驚くべき世界観を味わってみてほしい。