『ろくでなしBLUES』森田まさのり氏、「漫画で記憶喪失はやったらあかん」 過去に描いたエピソードを後悔

 漫画家・森田まさのり氏が、X(旧Twitter)上で展開している「なかったことにしたい」シリーズが記念すべき(?)50回を迎えた。

 自身が手掛けてきた『ろくでなしBLUES』や『ROOKIES』、『べしゃり暮らし』などの人気作について、納得できていないシーンを抜粋し、森田氏がセルフツッコミを行う「なかったことにしたい」シリーズ。基本的には掲載に至ってしまった作画ミスや誤表記を取り上げる楽しいポストが多いが、中には作家としての切実な思いが吐露されたものもある。今回の「その50」も、その例かもしれない。

 今回取り上げられたのは、『ろくでなしBLUES』の1エピソード。主人公の前田太尊が軽度のバイク事故で頭を打ってしまい、一時的に記憶を失って「良い子」になってしまう……という、コメディ要素の強いシーンだ。普段、なかなか素直になれない太尊が千秋にデレデレしている姿が見られる貴重なエピソードで、ファンからは「なかったことにしないで!」という趣旨のコメントも相次いでいる。しかし森田氏は、「こんなん描いてたのか〜!?なんやこれ!?漫画で記憶喪失はやったらあかんとこの時学ばんかったんやな…。『き…君…かわいいね…』ちゃうやろ!可愛ないわ!ほんまになかった事にしたい回!」と捲し立てるように後悔の念を綴った。

 「この時学ばんかったんやな……」というのは、お笑い/漫才をテーマにした人気作『べしゃり暮らし』のエピソードを指してのことだろう。2023年8月にポストされた「なかったことにしたい。その20」で、森田氏は主人公の上妻圭右が記憶を失ってしまったシーンを取り上げ、「最終回へ向けて、色々考えた挙げ句やってしまった禁じ手。やはり作品の世界観にはそぐわないし、他のやり方はないものか…、いやいやこれでこそあの終幕の展開を迎えられる…などと描いてる最中も悩んでました。今思えばやっぱり…なかったな…。」と語っていた。

 ファンにとっては、感動の最終回につながるドラマティックなエピソードだが、森田氏は記憶喪失を「禁じ手=安易なもの」と捉えて、いまも“物語上、何が最善だったか”を考え続けているようだ。この妥協を許さない姿勢が、ヒット作を連発する人気作家たる所以なのかもしれない。

 作品のファンからすると、作者自身が物語の本筋にかかわる部分で後悔を語ることには賛否あるだろう。しかし、同時に作者自身が過去の人気作について、ファンがアクティブに語り合える機会を作ってくれるというのは、極めて貴重なことだ。原画も多く公開されている森田氏のXをフォローしておこう。

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