ここは日本で一番カオスな街! 本橋信宏による上野の秘密に迫るディープ・ルポが面白い

 Netflixでドラマ化、世界190ヶ国で配信され大ヒットした『全裸監督 村西とおる伝』の著者、本橋信宏が「上野」という街に迫る。人気の動物園や豪華な美術館の裏側には現代の魔境というべき混沌と秘密が眠っていた……。8年ぶりの上野再訪を描く文庫版あとがきを収録して刊行された。

 本書『上野アンダーグラウンド』はノンフィクション作家の本橋信宏が、一年以上かけて上野を取材し、その裏側に迫る人気街ルポシリーズの第3弾(第2弾の『東京の異界 渋谷円山町』は新潮文庫より発売中)。

 第一章「高低差が生んだ混沌(カオス)」では上野の歴史を掘り下げ、その高低差のある地形からいかにして混沌が生まれたのか、どのように上野という街が発展してきたかに加え、上野の象徴でもある西郷隆盛像の謎にも迫っていく。

 第二章「上野〝九龍城ビル〟に潜入する」では道路には看板が溢れ、中国エステが乱立した「上野〝九龍城ビル〟」と呼ばれる雑居ビルに潜入。妖しい雰囲気のエステの実態を調査しながら、そこで出会った女性から話を聞き出し、日本各地で勢力を広げる中国エステや上野の性事情を明らかにしていく。

 第六章「アメ横の光と影」では、アメ横で経験した苦い思い出、まるで日本じゃないように錯覚する地下商品街、アメ横に隠された闇を暴きながら、アメ横という場の特異性に焦点を当てていく。

 文庫版あとがきでは8年ぶりに上野を再訪し、本作で取り扱った場所を訪れ、登場した一癖も二癖もある人物たちと再会し、当時の思い出や近況を語らいながら、大きく変わった街の様子を描いている。

 「視点を変えれば、何が見えるか。」――著者が1つのテーマとしているこの視点の変化によって、上野という街のイメージがみるみるうちに変わっていく。上野という誰でも知る街の、誰もは知らない秘密と混沌を味わってみてはいかがだろうか。

書誌情報

【タイトル】上野アンダーグラウンド
【著者名】本橋信宏
【発売日】3月28日
【定価】990円(税込)
【ISBN】978-4-10-101983-3

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