洋介犬、イラスト・漫画分野で多発する詐欺に警鐘 「自分たちもターゲットになる時代だと再認識すべき」
人気ホラー漫画家で、日本漫画家協会の特別職参与を務める洋介犬氏が、イラスト・漫画分野で多発している詐欺について警鐘を鳴らしている。
洋介犬氏は「近年、イラスト・漫画分野におけるコンサルタントや情報商材詐欺、そこからさらに悪質な勧誘への誘導が多発している」との報告を受け、調査とヒアリングを続けてきたという。SNSでのバズをきっかけに漫画家/イラストレーターとして成功するクリエイターも増えている昨今、夢を叶えたいという思いにつけ込まれてしまう人も少なくないのかもしれない。
洋介犬氏の調査によれば、手口は以下のようなものが多いという。
・「すぐに、◯◯しながらでも稼げる」とハードルが低く稼げるように過剰に思わせる。
・「これだけのPVや収入が」ととにかく大きい数字/金額で惑わせる。
・自らのメルカリ等でのイラスト販売実績/成功例を誇張して提示。
・「限定招待講座」「あなたは選ばれました」等と特別感でそそって高額コースへ誘導する。
・講座の内容もさほど画期的なものではないか、インフルエンサーの記事内容を無断で転用しているレベル。
いずれも詐欺の常套手段で、これを入り口に悪質なネットワークビジネス等に勧誘されるケースもあるという。SNSでアクセスを稼ぐには、ある程度「コツ」と言えるような再現性のあるポイントもありそうだが、洋介犬氏が繰り返し語っているように、「確実にバズる方法/確実にウケる漫画を描く方法」が存在するなら、漫画家も編集者も苦労しない。作品の価値を広く伝えるため工夫はすべきだが、近道はないということは認識したいところだ。
また詐欺被害の体験談が寄せられる中で、大きく2パターンの「窓口」があることも明らかになったそうだ。ひとつは「DMを送って来てイラストのコンサルタントやプロデュースを申し出て来る」。もうひとつは「SNSで『バズって稼ぐ方法教えます』などのアカウントを開設し、講座参加者を募集している」だ。ある程度話が進行すると、LINE公式アカウントへの誘導が行われるケースが多いようだが、そもそも情報商材の販売は同サービスの規約違反であり、ここも詐欺に気づくポイントになりそうだ。
もちろん、正しくスキルや知識を伝え、業界の底上げに貢献している漫画講座・イラスト講座は存在する。詐欺の増加により真っ当に教えている人々が疑われてしまうような状況になりつつあることも、洋介犬氏がこの問題に強くコミットしている理由だろう。
自分に限って騙されることはない……という心の隙は誰にでも生じ得るもの。さらに今回のケースは「イラストや漫画が描ける」クリエイターを狙い撃ちにしたものであり、一定の能力を持っていることが前提になっているからこそ、「やり方次第で稼げる」という言葉に説得力が生じ、油断を招いてしまうのかもしれない。
洋介犬氏は「以前なら『こんなニッチな分野を狙うかな?』という認識がありましたが、すでにイラスト/漫画が描ける潜在的人口は多くなっており、『自分たちもターゲットになる時代だ』と再認識すべきと思います」としている。甘い話に夢を挫かれないよう、あらためて気を引き締めたいところだ。