【連載】速水健朗のこれはニュースではない:ヤンキーとリアリティー番組
アメリカはリアリティー番組の出身者だらけ
Breaking Downは、格闘技大会とリアリティー番組をミックスしたコンテンツだ。ちなみにリアリティー番組についての研究はまださほど多くはないが、アメリカの社会学者が書いた『リアリティ番組の社会学: 「リアル・ワールド」「サバイバー」から「バチェラー」まで』という本がある。
リアリティー番組は、肌の色、性別、性格、属するコミュニティーの違う人々が集められ、あるシチュエーションを切り抜けるゲームやオーディションなどが繰り広げる。違ったタイプのキャラを一同に集めることで「社会の縮図」の構図が生まれやすい。見る人は自分に近い誰かに感情移入しながらそれを楽しむ。出演者の中には、必ず自分勝手な性格のキャラが混ざっている。そいつは当初は嫌われ者。だが時を経て、視聴者の誰もがそいつを応援しはじめる。自分勝手な奴とは、一番正直なやつでもある。
現代のアメリカでは、セレブもインフルエンサーも大統領も皆、リアリティー番組の出身者だらけだ。キム・カーダシアンもカーディ・Bもエマ・ストーンもジェニファー・ハドソンもドナルド・トランプも。ドナルド・トランプが『アプレンティス』というリアリティー番組で使い続けた「ユー・アー・ファイヤード(おまえはクビだ)」という言葉は、「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」のキャッチコピーより、使われた回数も効力も上だったかもしれない。朝倉未来の「じゃあ次の人どうぞ」は、どこまでいけるだろうか。
■参考
映画『清洲会議』
斉藤環『世界が土曜の夜の夢なら ヤンキーと精神分析』
バン仲村『人生はバズったもん勝ち』
和久井健『東京リベンジャーズ』
ダニエル・J・リンデマン『リアリティ番組の社会学: 「リアル・ワールド」「サバイバー」から「バチェラー」まで』