【話題作試し読み】刺激的すぎるバトル漫画『キリングバイツ』が誕生した経緯とは? 原作&作画の黄金タッグを直撃
冴えない青年・野本は謎の少女・ヒトミと出会い、とある廃棄場へと連れてこられる。行き場のないモノが集められたそこでは、人の頭脳と獣の牙を併せ持つ「獣人」たちによる凄惨な賭け試合が行われていた。その戦いの名は「牙闘(キリングバイツ)」——!
人気漫画配信サイト「コミプレ」のなかでも、最も刺激にあふれたコミックレーベル「わいるどヒーローズ」で連載中の『キリングバイツ』(原作:村田真哉/作画:隅田かずあさ)。連載開始から10年を超え、アニメ化もされているヒット作だが、2月28日発売の最新23巻においても想像を超えた展開が続いており、勢いを増し続けている状況だ。
本作を手がけるのは、異世界ファンタジーの話題作『最強スキル「命乞い」で悔しいけど無双しちゃう元魔王様の世界征服活動』でもタッグを組む原作:村田真哉&作画:隅田かずあさのゴールデンコンビ。二人の出会いから『キリングバイツ』の制作背景まで、じっくり話を聞いた。(編集部)
『キリングバイツ』第1話を試し読み(続きを読むには画像をクリック)
――2月28日発売の最新23巻も話題になっているなかで、あらためて、お二人の出会いについて聞かせてください。
村田:隅田先生に初めてお会いしたのは2011年冬、担当編集に『キリングバイツ』の作画候補として紹介していただいた時でした。これはチャンスとばかり『神狩鬼』の単行本にサインをねだったところ、なんと筆ペンで豪奢で流麗な絵を描き出し始め、そんな事が人類に可能なのかと震えていると「原稿も筆ペンで描いてます」と宣い出し、作家としての格の違いを見せつけられたことをよく覚えています。
隅田:新宿のハワイアンレストランでお会いしましたね。「やれますか」「やれませんか」ではなくて、「やりましょう」みたいな話をしつつ、時々突然始まるフラダンスタイムに翻弄されたのをよく覚えております。確かこの段階で、別の作品のネームを見せていただいたと思いますが、村田先生のネームは読みやすく描きやすそうだという印象でした。
――「獣人」による「牙闘(キリングバイツ)」というエキサイティングな設定は、どのように生まれたのでしょうか。
村田:漠然と獣人バトル漫画を描こうというイメージで企画を進めていたのですが、どんな動物が最強なのか、どんな獣人が主人公に相応しいのかが決まらず難航していました。そこで担当編集が教えてくれた「ラーテル」について調べてみたところ、その漫画の異様な生態にすっかり惚れこんでしまい、「ラーテルがいろんな動物に挑んでいく話が描きたい」という想いから、『キリングバイツ』の設定が誕生しました。
隅田:女子高生・ショートカット・ラーテルという動物の獣人、というワードは最初の段階から出ていましたね。
――動物の特性がうまく生かされており、村田先生がもともと深い知識を持っていたのかも気になります。
村田:僕は昆虫や動物の専門家ではなく、単なる調べもの好きなので、飼育の実体験や学術的な専門知識には乏しいのですが、素人ならではの生物に対する素直な驚きや、自然や生命の偉大さに対する真摯な感動を表現する気持ちには、誰にも負けない自信があります。
ーー隅田先生は獣人による迫力のバトルを描く上で、どんなことを意識していますか?
隅田:もともと動物に詳しいわけではないので、ネームが来るたびに動画やウェブサイトなどで調べて、爪と牙、それと単純な質量が効果的に見えるかどうか、実際の動物の特性を生かした描写ができるかどうか意識しながら描いています。毎回反省点も多いですが、それが次につながっていると信じています。
――物語の序盤から読者を惹きつけるのは、なんといっても宇崎瞳の力強くキュートなキャラクターです。多くのギャップがうまく集約された彼女のキャラクターはどのように生まれたのでしょうか。
村田:宇崎瞳のキャラクター性はひとえにラーテルの賜物です。世界一の怖いもの知らず、奔放でわがままで自信にあふれ、かつ好奇心旺盛で、未知への興味を欠かさない賢さがあり、どんなに追い詰められても決して心が折れない。それらの特性が、そのまま瞳の魅力になっていると思います。
ーーそんな瞳の魅力を引き出すために、隅田先生はどんなポイントを意識していますか。
隅田:私は若干筋肉質な女性を描くのが好きなんですが、ただ以前はあまりそういったヒロインは好まれないというか……そういうヒロインはいないことはないがニッチな感じでした。そういった中で、ある程度腹筋があるデザインを村田先生や担当さんに後押ししてもらう感じで。瞳はゴリゴリにならず柔らかさを感じる肉体というのをポイントにしています。
――運命に翻弄されて裏の世界に巻き込まれていく野本裕也の成長も大きな見どころです。少年漫画的な魅力に溢れた素敵なキャラクターですが、こちらについてもどのように生まれ、また作画上のポイントはどこにあるのか、聞かせてください。
村田:連載当初の野本は僕自身です。これもラーテルという動物に感嘆し、惹きつけられる僕そのものを視点役として配置しました。僕がラーテルや様々な動物から得た知識や学んだ事が、そのまま野本の成長に繋がっています。しかし成長と共に、だんだん僕から遠ざかってきました。
隅田:最初にネームを見せていただいた時に「え、このモブみたいなのが主人公なんですか?」と思わず聞いてしまうくらい野本は普通で、それはもう正直不安になるほど普通という印象です。ただ物語の冒頭で、常人でない人々の中にあって読者視点と言うもの担うキャラとしてはありだと思い、モブっぽいけどモブではないを目指してデザインしました。当初から、彼が毎朝必死にセットしている髪が、自然体になって下ろされたら一つの成功と言っていいと話しておりました。
――非常に個性的で再登場も期待したいキャラクターが多く存在しますが、それぞれお気に入りのキャラクターとして思い浮かぶのは?
村田:お気に入りは何といってもオシエちゃんこと乃塒(のどぐろ)押絵です。いろいろなキャラクターが獣人になっていく中で、彼女だけが獣人になれず、しかしその行動はどこまでも動物的であり、「人間は知能を進化された動物の一種に過ぎない」という本作のテーマにも関わる地味に重要な存在です。
隅田:篠崎舞ですかね。とにかくデカい全体的なボリューム感、眼鏡、ロングの黒髪、若干のつり目。設定としては、あらゆる要素の大盤振る舞い大渋滞状態です。ですが自分の中にある篠崎は、もっとこう凄い事になっていて、未だに納得できる形で描けていない部分も含め気に入っております。
――これから作品を楽しむ読者に向けて、注目してほしいポイントを聞かせてください。
村田:これはもう「最強の獣は何なのか?」という永遠の問いに想いを馳せつつお読みいただくの一番いいと思います。僕もずっとそれを考えながらネームを描いています。
隅田:村田先生のネームはとにかく読みやすくてテンポも良い、読むというところにほぼ脳を使わなくてもいいので、頭を空っぽにして「最強の獣とは?」という所に注目してほしいです。
――連載を追いかけ、アニメの続編を希望するファンも多いと思います。これまで応援してきたファンに対しても、一言ずつメッセージをお願いします。
村田:先日『キリングバイツ』の連載が10週年を迎えましたが、正直、こんなに長く続くとは思っていませんでした。全ては読者の力であり、また読んでもらうことが何よりの励みです。物語はいよいよクライマックスです。これからもどうぞよろしくお願いします。
隅田:私自身もアニメの続編は見たいですねー。『キリングバイツ』はだいぶ長い連載になり自分自身驚いていて、それも全て読んでいただいている読者のおかげだと思います。これからもより盛り上がるよう励んでまいりますので、よろしくお願いします。
◆『キリングバイツ』
https://viewer.heros-web.com/episode/10834108156632483702