男性の終活、成人雑誌やDVDはどう処分すべきかーー2000年代アダルトメディア事情とその対策

 終活を考えるような年齢の人々は、言うまでもなくシニア世代である。この世代の人々にとって、DVDは普及期から親しんできたメディアだ。一般にDVDの普及期は、各種プレイヤーが出現しPlayStation2が大ヒットした1999〜2000年ごろとされる。今から25年ほど前に目新しいメディアとして広く知られるようになったDVDには、VHSに比べて圧倒的に薄く、書籍や雑誌の付録として販売できるという特徴があった。

 この特徴により、アダルトDVDは単に専門店で売られただけではなく、コンビニや書店での成人向け雑誌の付録としても販売されることとなった。つまり、専門店で購入するかレンタルするかしか選択肢のなかったVHSのAVよりもずっと広い販路で、しかもレンタルという形を取らず買い切りで普及していったのである。現在70歳の高齢者も、25年前ならば45歳。この年代の人々は、普及期からDVDの形でアダルトコンテンツを利用し、そのままハマって溜め込んでいくことになったケースが多いのではないだろうか。

 しかしその後、ネットの高速化とスマートフォンなどハードウェア面での進化が急速に進み、アダルトコンテンツは動画・静止画を問わずネットを介した配信が中心となった。現在の配信メインのアダルトコンテンツの形態にうまく馴染めている高齢者は、さすがに少数派だろう。多くは慣れ親しんだ紙メディア、そして映像が見たいのならばDVDという形に落ち着いていることが推測される。

 つまり、「男の終活」はDVD普及期に壮年だった人々が高齢者になった、現在ならではのビジネスなのである。映像やコミックの配信が普及し、さらに素人・玄人を問わず個人でアダルトコンテンツを配信できる環境が整った現在では、わざわざ記録媒体を購入するユーザーは減ることはあっても増えることはない。現在の「DVDや紙媒体の回収」を中心とした終活ビジネスは、この先ずっと社会の中で必要とされるものではないはずだ。

 もっとも、それでも人に言えない品を抱えこんでしまうのが人間である。死後のアカウント管理や溜め込んだファイルの削除、はたまたスマホやPCといったハードウェアの処理など、電子的なアダルトコンテンツについても処理サービスの需要が発生することは考えられる。今後高齢化が進む中で、また今とは違った形の「男の終活」がビジネス化される可能性は充分にあるだろう。

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