『葬送のフリーレン』ドワーフはなぜ一つのことに“200年”をかける? 職人たちの人生を考察
人の生き様や、長命のフリーレンが旅を通して人を知っていく様子を描いた漫画『葬送のフリーレン』。たった一話の中でも、それぞれの思いやこれまでの積み重ねなどが描かれ、読者の価値観が変わるほどに洗練されているのが特徴だ。
フリーレン一行の旅の中で、一つのことに没頭したドワーフが度々登場する。なぜか彼らは、渓谷を渡る橋を作り続けたり、一つの酒を200年にわたって探し続けていたりする。彼らが何故、200年かけて何かひとつの事柄に注力するのか考えてみたい。
まず、200年かけてトーア大渓谷に橋をかけたドワーフ、ゲーエンを紹介しよう。トーア大渓谷は、深さ3,000mの断崖絶壁、上流から渡るには険しい山岳地帯、下流も断崖絶壁と渡るまでに2週間はかかるという難所だ。
ゲーエンは昔、住んでいた村を魔族に襲われたことがあった。しかし軍は渓谷の対岸に駐屯していたため助けることができなかったのだそう。その時の後悔から橋を作っていると作中で話している。勇者ヒンメルが立ち寄った際には、建設資金が底をついて建設を中断していたものの、資金の援助を受け、200年かけて見事完成させてみせた。
続いて、69話で描かれた皇帝酒(ボースハフト)を探し続けたファスについて。ファスは200年以上ボースハフトを探していると作中で話しているが、エルフのミリアルデが残した石碑を200年前に見つけ、「それが確信に変わった」と語っている。そのため、本格的にボースハフト探しは200年で達成できたとしてもいいだろう。
石碑には「ボースハフトは最上の名酒である」と残されているものの、これはミリアルデの暇つぶしでついた嘘。味が悪い安酒であり、ファスも残念な結果だと話してはいたが「こんな楽しい夜は初めてだった」と語っている。
さて、どちらの例も200年というのはなぜだろうか。長寿と言われるドワーフの寿命だが、単行本4巻の33話にて「300年くらい」と明言されている。作中ではフォル爺という400歳近い人物もいるものの、200年という膨大な時間は寿命90歳の人間で例えると、約60年を一つに費やしたことになる。もし20歳から始めたとするならば、80歳までとなり、生涯をかけたといっても過言ではない。