宮城県仙台市が舞台『Wake Up,Girls!』10周年、アイドル業界の裏事情や震災を赤裸々に描く先駆的作品

Wake Up, Girls! OFFICIAL GUIDE BOOK (Gakken Mook)
Wake Up, Girls!写真集 7 Girls History

  1月10日、アニメ『Wake Up,Girls!』(以下、WUG!)が公開から10周年という節目を迎え、Xでは祝福のコメントが多数上がっている。監督を山本寛、脚本を待田堂子、キャラクターデザインを近岡直が担当。今年の1月1日には能登半島地震が発生したが、『WUG!』は東日本大震災の発生を受ける形で宮城県を舞台に描かれた作品である。今なお本作を評価する声は多く、熱烈なファン“ワグナー”が存在する。

 『WUG!』は宮城県の中でも特に仙台市を舞台にしている。作中には実在する風景や店舗などが多数描かれ、放送が終わった後も聖地巡礼に訪れる人は多い。例えば、林田藍里の実家という設定で、仙台駄菓子の本舗として有名なのが「熊谷屋」だ。店内には今でも藍里役を務めた声優・永野愛理のサインや、藍里の等身大POPが置かれている。現在もメッセージノートが置かれ、来店したワグナーの書き込みは絶えることがないようである。

  今やアイドルアニメ全盛時代だが、そうした作品に先駆けるように『WUG!』はアイドル自身の葛藤や、アイドル業界の裏事情までかなり赤裸々に描くなど、アイドルに造詣が深い山本寛によるリアリティのある描写も話題となった。また、東日本大震災の被災地のシーンも丁寧に描かれた。『WUG!』はその後に第2期として『新章』が制作されたものの、監督の交代劇によってメッセージ性が薄れてしまった印象が否めないのが残念である。

 近岡直によるキャラクターデザインも魅力であろう。近岡は同人誌でも制服少女を数多く描いているほど、女子高校生の描写に定評のあるアニメーターだ。7人のキャラデザでこだわりが随所に生かされ、制服のデザイン一つ見ても緻密である。過去にリアルサウンドブックのインタビューで、近岡は「趣味嗜好を投影すると強みが生まれる」と明かしているが、そうした強い熱意が魅力的なキャラを生んだ要因であろう。

  『WUG!』をきっかけに声優デビューしたのが、作中にも登場するアイドルユニット「Wake Up,Girls!」の7人である。7人は声優未経験者の一般人からオーディションで選出され、その中には後に『ぼっち・ざ・ろっく!』のぼっちちゃん役を務めた青山吉能や、『きかんしゃトーマス』のトーマス役を務める田中美海などの人気声優がいる。山下七海も『プリパラ』を筆頭に多くの人気作に出演する売れっ子であり、メンバーはそれぞれ多方面で活躍している。

  このように、振り返ってみると、『WUG!』がアニメ界に与えた影響は想像以上に大きいことがわかるし、内容も先駆的な作品であった。SNSを見ると、今回の10周年を機に、正式な続編を望む声も上がっているようだ。できることであれば、オリジナルメンバーで続編が制作される機会を強く望みたいし、同様の思いを抱くワグナーも多いのではないと思う。

『うる星やつら』OP作画監督・近岡直に聞くキャラデザの極意 「作家性とフェチは同じ、趣味嗜好を投影すると強みが生まれる」

 宮城県仙台市を舞台にしたアニメ『Wake Up, Girls!』でキャラクターデザインと総作画監督を務めた近岡直。…

関連記事