『SLAM DUNK』宮益義範、『弱虫ペダル』小野田坂道……素人から強豪校でスポーツを始めた熱い漫画キャラ4選

 スポーツの世界において経験値の差というものは非常に大きく影響する。それが競技人口の多い野球やサッカーといった人気スポーツであれば尚更だ。実際、プロスポーツ選手の経歴を辿れば、そのほとんどが幼少期から競技を始めた人ばかり。スポーツ漫画の世界でもそれは概ね変わらない。

 それでも全く未経験ながら高校からスポーツを始め、チームの中で確かなポジションを築いた選手達が存在する。本記事ではそんな高校から強豪校でスポーツを始めたキャラクター達にスポットを当てて紹介していきたい。

秘めたポテンシャルがロードレースの舞台で開花『弱虫ペダル』小野田坂道

 まずは自転車競技を舞台に描いた作品『弱虫ペダル』(渡辺航)の主人公、小野田坂道を挙げたい。内気な性格の小野田は高校に上がるまで友達も作れず、いつも1人で大好きなアニメや漫画の世界を楽しむ為に毎週ママチャリで片道45キロある秋葉原まで通う日々。

 そんな小野田が同級生で自転車競技経験者の今泉俊輔や鳴子章吉との出会いを通じて、自転車で走ることの魅力に触れ、総北高校自転車部への入部を決意する。

 自宅の前の急坂や学校の裏門にある通称「裏門坂」と呼ばれる激坂を鼻歌まじりで難なく登る小野田には自然と「クライマー」としての資質が備わっていたこともあり、メキメキと実力をつけていく。

 また、自転車競技の性質上、時に自分が犠牲になってでもチームの為に身を捧げることも厭わない小野田の仲間を思う気持ちの強さも、この競技に向いていた1つの要因だ。本人のポテンシャルが様々な人間が関わることによって引き上げられ、パフォーマンスが最大化する。その究極系を小野田坂道は見せてくれているのだ。

愚直に走り続けた先に光を見出した『DAYS』牧野つくし

 『弱虫ペダル』の小野田同様、内気な性格でこれまで友人関係にも恵まれなかったという共通点を持つキャラクターが、高校サッカーをテーマに描いた『DAYS』(安田剛士)の主人公、牧野つくしだ。 

 これまでスポーツには全く縁がなく、特に特技も持たないつくし、ある日クラスメートの風間陣にフットサルに誘われたことでサッカーと出会い、風間への憧れから風間も所属する名門聖蹟高校サッカー部への入部を決意する。

 全国制覇を掲げる強豪サッカー部の練習に全くついていけないつくし。実力差は明らかで、チームメイトからも何故こんな素人がここにいるのか、どうせついていけずにすぐ辞めるだろう、と冷ややかな視線を浴びせられる日々。

 それでもつくしは折れずに、今の自分にできること、ただ走り続けることを愚直に繰り返す。そんなつくしの献身性はプレースタイルにもそのまま現れる。とにかく全力でトライし続けるつくしに、最初は懐疑的な目を向けていたチームメイト達も次第につくしを認めはじめる。

 サッカーの腕に覚えのある個性的なメンバーが集まっている集団の中で、つくしのような異質の存在がいることで聖蹟というチームが真の意味で1つにまとまっていったように筆者は捉えている。

 素人から始めた人間がこれだけ努力し、やがてスタメンに名を連ねるまでに成長している事実。勇気を貰えたような気持ちになる人間は少なくないのではないだろうか。つくしが憧れていた聖蹟高校サッカー部の先輩や風間達も、またつくしの存在に助けられている。そんな相互関係も本作のたまらない魅力となっている。

絶え間ない努力で掴んだチーム内の信頼『SLAM DUNK』宮益義範

 全くの素人から、チームメイトの信頼を勝ち得た選手と言えば『SLAMDUNK』(井上雄彦)に登場する宮益義範も外せないだろう。神奈川では16年以上に渡りトップの座(井上雄彦)に君臨し続ける常勝海南高校に宮益は素人ながらも入部する。身長は160cm体重42キロ。小柄でフィジカルも弱く足も遅い宮益だったが、あまりの練習の辛さに退部する部員が後を絶たない海南で3年間厳しい練習に耐え抜き、なんと3年次には海南のユニフォームを取る男にまで成長したのだ。

 翔北との試合では、桜木花道をゲームから締め出す重要な役割を完遂し、更にはチームNo2と評されるシュート力も兼ね備えた宮益。

 作中で宮益の見た目に油断した湘北高校の面々を前にして、海南のキャプテン牧が宮益の肩を抱いて「海南のユニフォームを取った男だぞ」と堂々と誇る姿からもチームメンバー全員が厚い信頼を置いていることが分かる。

 自分にできる限りのことをやる、と意気込む宮益の姿は他プレーヤーと比べて経験値に劣る自分がこの世界で生き残る為に身につけた武器で食らいつこうとする姿勢の何よりの表れではないだろうか。

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