『呪術廻戦』「漫才」の次は「裁判」!? トリッキーな展開でも熱い“メタ能力バトル”を解説

※本稿は『呪術廻戦』の連載最新話に触れる内容を含みます。未読の方はご注意ください。

 「週刊少年ジャンプ」で連載中の人気漫画&アニメ『呪術廻戦』。能力バトル作品として異彩を放つ本作だが、ここに来てさらに戦略性が増し、単純な呪力や膂力を半ば無視したメタ的な能力で強者を打ち負かそうという、トリッキーだが熱い展開を迎えている。

 最強の呪術師・五条悟×呪いの王・両面宿儺によるシリアスかつ異次元の呪術バトルから一転、直近の連載ではなぜか異様に力の入った「漫才」が展開され、読者を困惑させていた。詳細は省くが、これは35歳の売れない芸人であり、場合によっては五条を凌ぐほどの威力を発揮する術式「超人(コメディアン)」を持った髙羽史彦の活躍によるものだった。

 その能力をざっくり言うと、本人がウケると確信を持った想像が、そのまま実現してしまうというもの。本人に自覚がなく、また本来攻撃的な人間ではないため戦闘に向いているとは言い難いが、それゆえに顕現した全能の力だと考えられる(そうでなければ強力すぎる)。

 例えば、『シティーハンター』の冴羽獠と100tハンマーを思い浮かべるとわかりやすいだろうか。普通であれば一発で絶命するような攻撃を受けて、どうなったら笑えるかーーという想像が現実になってしまうわけで、ギャグ漫画の主人公が最強であるように、ハマれば無敵の能力になる。だからこそ、モブ同士の戦いではなく、人類の存亡をかけたと言っていい大一番に起用され、コント/漫才が展開されたわけだ。

 さらに最新の展開では、宿儺の「罪状」が真剣に話し合われるという、これもバトル漫画では極めて珍しい状況になっている。

 これは卓越した頭脳を持つ弁護士でもある、呪術師・日車寛見の術式にかかわる。彼の領域「誅伏賜死」が展開されると、その内側では暴力行為の一切が禁止され、中立的な存在であるジャッジマンによる裁判が始まる。ジャッジマンは全知だが、陳述により無罪を勝ち取ることができればセーフ。有罪とされれば有無を言わさずペナルティが科され、死刑となれば、日車には斬られたものが例外なく絶命する「処刑人の剣」が与えられる。

 つまり、法に照らして宿儺が有罪であるとジャッジマンを納得させることが焦点となり、この作戦が決行されれば、『べしゃり暮らし』(漫才)的バトルが終わって間もなく『逆転裁判』的バトルが始まるという、恐るべき状況が生まれることになる。

 ギャンブル漫画ならルールの違うさまざまなゲームに命をかけることはよくある。バトル漫画でいえば『幽☆遊☆白書』や『ジョジョの奇妙な冒険』などにもゲーム性の高いバトルはあったが、今回のように“相手がラスボスクラス”というケースは極めて珍しい。

 五条VS宿儺のような壮絶なバトルであれば、どんな結末でも一定の納得感とカタルシスがある。一方、「理屈」で相手の虚を突く作戦が成功したとして、読者にはモヤモヤが残りそうだが、それでも「やりかねない」と思わされるのが奇才・芥見下々だ。もっとも、想像しやすいのは宿儺が有罪判決を受ける姿より、法廷に立った上で弁論で勝利し、無罪を勝ち取る姿だが。

 作中最大のバトルから、さまざまな意味で息もつかせない展開が続く『呪術廻戦』。ぜひ連載でチェックしてみてはいかがだろう。

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