声優・悠木碧、「好きを仕事にする」ことへの持論とは 初エッセイ『悠木碧のつくりかた』イベントレポ

 『魔法少女まどか☆マギカ』や『戦姫絶唱シンフォギア』、『薬屋のひとりごと』など数多くのアニメ作品で主演を務める人気声優・悠木碧による、初のエッセイ集『悠木碧のつくりかた』(中央公論新社)の出版を記念したトークイベントが11月5日、東京・大手町で開催された。悠木がこうしたステージに登壇することは珍しく、人気声優・悠木碧の生の声を間近で聞ける非常にレアなイベントとあって、非常に多くの応募があったという。そんな高倍率を突破した当選者たちを、悠木は「強者(つわもの)たち」と賞賛。「ここだけの話」と前置きしながら、本書には書けなかった秘蔵のエピソードを次々と披露して、集まったファンを沸かせた。

悠木碧『悠木碧のつくりかた』(中央公論新社)

 『悠木碧のつくりかた』は、生い立ちから子役時代、声優業との出会い、人気キャラクターを演じながら走りきった大学生活の思い出などからなる「お仕事篇」と、オフの日の過ごし方や推しへの愛情、メイクやファッションなどの話題を収めた「推しごと篇」の2章に分かれ、彼女の半生が綴られた初のエッセイ集。ほぼ文章のみの構成で、いわゆる声優のフォトエッセイとは一線を画した存在感を発揮し、声優/アニメのファンや業界人だけでなく幅広い読者層で話題となり、発売前重版、更に発売週に三刷り重版が決まった。

 イベントは担当編集者が司会を務めた。慣れない司会に担当編集者があたふたする場面もあったが、そこは悠木が「彼女すごく優しくて、1行1行に感想を書いてくれるんですよ」など、さりげなくフォロー。かと思えば編集者の一言に悠木が突っ込みを入れる場面もあるなど、二人三脚で本書の制作が行われてきたことを伺わせた。

 担当編集者は『ユリイカ』や『クイック・ジャパン』などの雑誌に悠木が寄稿したエッセイを読み、約3年前に本書の執筆持ちかけたという。初めての依頼に驚きつつ、「元々文章を書くのが好きだったから、自分の文章に価値を見いだしてくれたことがうれしかった」と、執筆を決めた経緯を説明した悠木。担当編集者からテーマ表に則り、約1年かけてコツコツ執筆したとのことだ。フォトエッセイにするのではなく、文章メインで構成したスタイルについても、「文章のほうが気持ちを齟齬なく伝えられると思った。それに私らしい本だともらえるんじゃないかと」と、得意分野を活かした結果であると説明。

 本書には、自分が好きなことを仕事にしていることについて書かれており、「本当に好きなのか自問自答する。仕事になったことで純粋ではなくなった分、じゃあその“好き”に価値はあるのか、悩み所ではある」と真剣に語る。また“推し”についての話、SNSの扱いについて、さらに社会人になってからの友だち作りについてなど、悠木らしい独特の角度から持論を展開した。

 また、本書の中では数々の幼少期のエピソードも明かされており、それに伴い家族の話や母親の子育てについても触れていることから、子育て世代の主婦層にも刺さっているそう。自身の母親から感想を聞く機会もあったそうで、その反応が本人としてもとても印象的だったことを語った悠木。イベントでは書き切れなかった幼少期の体験談も披露され、幼い頃の悠木の可愛らしい姿が想像されて、ほっこりした気持ちになったと同時に、その自由奔放さに改めて驚かされる部分もあった。

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