毒キノコ中毒はなぜなくならないのか? 素人が「図鑑で調べる」だけでは防げない理由

なぜキノコ中毒はなくならないのか?

 毒キノコを誤って食べてしまい、嘔吐や下痢に見舞われ、時には命を落とすこともある“キノコ中毒”は毎年必ず発生している。行政が毒キノコに気をつけるようにと啓発活動を行っているにもかかわらず、一向になくならない。さらに、道の駅や農産物直売所で誤って毒キノコを販売してしまう事件も発生している。今年も、秋田県のとある道の駅で、毒キノコのツキヨタケ(メイン画像参照)を間違って販売してしまう事故があった。

 なぜ、キノコ中毒は起きるのだろうか。原因として、以下のような点が挙げられる

1:食用キノコと間違って採ってしまい、食べてしまった。
2:美味しそうに見えるから採ってしまい、食べてしまった。
3:キノコ採取の経験が豊富なゆえの過信。
4:買った or もらったキノコが毒キノコだった。

 そもそも、キノコ中毒の多くは1のように、食用キノコと間違って採取し、中毒するケースが圧倒的に多い。例えば、クサウラベニタケ(毒)はホンシメジ(食用)とよく似ているし、ツキヨタケ(毒)はヒラタケ(食用)やムキタケ(食用)と似すぎている。ツキヨタケとヒラタケなどは、同じ木に生えていることもあるので厄介だ。

毒キノコほど見た目が地味

 キノコ中毒の大半を占めるのが、クサウラベニタケ、ツキヨタケ、そしてカキシメジの3種類による中毒だ。これらのキノコはすべて見た目も地味であり、見るからに美味しそうである。そのため、2のように、見た目に惑わされ「これなら食べれるんじゃないか」と思い込み、採取してしまうケースが多い。

 色が派手なキノコは毒キノコである、という迷信がある。しかし、これはほとんどの毒キノコに該当しないと言っていい。強いて言えば、ベニテングタケ、カエンタケ、毒のあるホウキタケの仲間ぐらいには当てはまるが、前出のように毒キノコは地味な見た目であり、美味しそうなものが多いのだ。

見た目にも毒々しいカエンタケ

 そして、3のようにキノコ採りの達人、つまりベテランほど毒キノコを採取する事例が多いとも言われる。要は、自分の腕を過信してしまい、採ったキノコを籠に放り込む前に確認を怠ってしまうため起こるのだ。4も、キノコ採り名人から貰ったキノコが毒だった、というケースである。

 キノコ採り名人によって引き起こされるのが、道の駅で毒キノコを売ってしまう事件である。道の駅のスタッフにはキノコに詳しい人がいないことがほとんどだ。したがって、納入されるキノコは名人の腕を信用したうえで並べられ、詳細には検品していないと思われる。こうした事故を引き起こさないためには、道の駅、そしてキノコ採り名人の意識改革が必要であろう。

古いキノコ図鑑を使うのはダメ

 キノコ図鑑はたくさん出版されている。キノコに興味を持った人の必携アイテムといえるが、図鑑を買うときにも注意が必要である。最重要なポイントは、「最近編集されたものを買うこと」である。科学は日進月歩だ。これまで食用と思われていた種類が実は毒だったというケースが近年相次いでいるため、最新の知見が反映されているものを手にするのが望ましい。

 図書館に置いてある古いキノコ図鑑は、パラパラと眺めているぶんにはいいのだが、これを参考にキノコ採りに行くことだけは絶対にやめよう。例えば、2000年よりも前のキノコ図鑑には、最悪最強の猛毒キノコとして今や子どもでも知っているカエンタケが掲載されていないことも多い。カエンタケが毒キノコだと知られるようになったのはここ20年くらいのことであり、それまでは滅多に見かけないキノコとされ、図鑑でも扱われなかったのだ。

 さらに、現在では毒キノコとして扱われているスギヒラタケは、2000年より前の図鑑では食用として扱われている。東北地方では味噌汁の具などの定番であり、缶詰まで売られていたほど有名な食用キノコが、毒キノコとして知られるようになったのは2000年代半ばのことだ。また、やはり食用とされていたシモコシも、今では毒キノコ扱いである。こうした事例があるため、キノコ図鑑は常に最新のものを使うのが鉄則である。

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