業界騒然!? アミューズとビーグリーが組んだ「小説コンテスト」はどう生まれた? キーパーソンが語る世界を目指すIP戦略
大手芸能事務所のアミューズと、電子コミックの配信サービス「まんが王国」を運営するビーグリーが協業し、オリジナルのIPの創出を目指してプロジェクトを立ち上げると発表した。その皮切りとして、ビーグリーが運営する「ノベルバ」で「目指せメディアミックス!『現代恋愛×ファンタジー』小説コンテスト」を開催し、作品を募集している。
異業種同士の提携は一見すると異端に思えるが、日本のコンテンツ産業の未来を拓く、夢のある事業なのだ。プロジェクトのキーパーソンであるアミューズの阿南史剛さん、ビーグリーの永井紀美男さんの2人に話を聞いた。
小説投稿サイト「ノベルバ」とは?
――「目指せメディアミックス!『現代恋愛×ファンタジー』小説コンテスト」の募集を行っている「ノベルバ」とは、どのようなサービスなのでしょうか。
永井:どなたでも利用できる、小説の投稿プラットフォームです。昨今ではこのようなプラットフォームからライトノベルのヒット作が数多く輩出されており、投稿プラットフォームは人材発掘の場として、出版業界から注目されています。
――すでに競合するプラットフォームがある中で、他社にはない強みはなんでしょうか。
永井:ビーグリーには、「まんが王国」という電子コミックを配信するプラットフォームがあり、また自社内には漫画の編集部もあります。そのため、漫画の編集から配信までワンストップで行うことができるので、投稿してもらった小説をコミカライズし、メディアミックスまで繋げられる体制が整っていることが強みとして挙げられます。また、「ボイスノベル機能」を備えています。オーディオブック、すなわち音声付きの小説をユーザー自身で作ることができる機能で、小説投稿サイトでは珍しいかと思います。
――ビーグリーがノベルバの事業を始めたのはいつでしょうか。
永井:2018年にまんが王国で配信される漫画の原作を生み出す場として、買収を行ったという経緯があります。
――買収したメリットはありましたか。
永井:まんが王国の編集部では、ゼロからオリジナルの作品を年間数十本つくっていますが、その一方で、ノベルバが原作の漫画作品も配信しており、売上データを見ると、ノベルバ原作も徐々にヒット率が高くなっています。したがって、弊社としてはノベルバ原作のコミカライズを今後も推奨していきたいと考えています。
――ヒットの要因はどこにあるのでしょうか。
永井:いろいろと要因はありますが、小説投稿サイトでは実数が見えやすいため、今この作品が人気だということがすぐにわかります。まずは原作、小説の時点でユーザーが面白いと思った作品を意識しながらコミカライズしているので、結果ヒット率を上げることができているのではと考えています。
両社が協力するメリット
――そんなビーグリーがアミューズと提携したと聞き、かなり意外で驚きました。
阿南:ビーグリーさんと別プロジェクトで企画開発をしているなかで、永井さんからコンテストの話をいただいたのが始まりです。弊社も新しいクリエイターの発掘にトライしたいという思いがあり、昨年の冬ぐらいから構想を練ってきました。
永井:阿南さんの方からも、アミューズが独自のオリジナルコンテンツ(IP)を創出したいと、話があったんですよ。
阿南:弊社は「世界と日本を繋ぐオリジナルコンテンツの開発」というテーマの元、2028年までにオリジナルのIPを80タイトル創出することを目指しています。その初手として、私たちが今までやってこなかったWEBTOONや電子コミックに挑戦しようと。
――オリジナルのIPを80タイトルですか!? その一環として、ビーグリーとの共同があるのですね。
阿南:5年で80本のIPを生み出すとなれば、単純計算で年間10~15本作る必要があります。私たちはアウトプットするプラットフォームを持っていないので、効率や質の高い作品を創ることを考えると、ビーグリーさんと共同でやるメリットが大きいと考えました。
――ちなみに、80タイトルはどんなジャンルなのでしょうか。
阿南:今のところ、ジャンルレスです。ジャンルにこだわるのではなく、純粋に面白いもの、勝てそうなものをやっていくべきだという方針です。
なぜ今、電子コミックなのか
――アミューズは長年の経験から、映像や舞台に圧倒的な強みがあります。まさかの電子コミックに注目されたのは驚きです。
阿南:世界と戦っていく視点で考えると、日本の強いコンテンツは漫画であり電子コミックだと思います。そして日本のマーケットを考えると、漫画の原作ありきで、舞台やドラマが生まれることも多いですよね。そこで、我々としては、原作をつくるところから取り組みたいと。韓国のコンテンツスタジオは自ら原作を作り、ノベルバのようなサイトであらかじめ効果測定をして、メディアミックスにつなげる体制ができているようです。私はその話を聞いて、これだと思いました。
――効果測定はメディアミックスをする上では重要ですよね。
阿南:コスト面を考えると、映像や舞台は1本作るのに数億円かかり、多大な先行投資が必要です。対して、電子コミックは効果測定がしやすく、しかも製作費は映像や舞台ほど莫大ではありません。そして数多くのチャレンジができます。そうした中で、強い原作を保有してこそ、強者と立ち向かえると考えます。
――芸能事務所が原作まで創り出すケースは、近年そうそうありませんよね。
阿南:おっしゃる通り、芸能事務所と言われるような業態でこのようなことををやっているところは少ないかもしれません。
――阿南さんの提携の話を聞いたとき、永井さんはどのように思われましたか。
永井:正直びっくりしました(笑)。アミューズさんって芸能事務所のイメージがありましたからね。ただ、話を聞くと、組むのは必然だと思いました。というのも、弊社は漫画を創って配信まではできるのですが、その先のメディアミックスに関しては自社単独では難しいのが現状です。なのでアミューズさんと協業することでの、漫画を起点にドラマ化だったり、アニメ化、舞台化など様々な取り組みが実現できると考えています。
女性向けのコンテンツに強みをもつ
――お話を聞いていると、提携は必然だったという永井さんのお話に納得です。
阿南:私たちのような芸能事務所がこういうことをやるよと言っても、なかなか相手にしてくれる企業さんは少ないと思うのですが、ビーグリーさんはフレキシブルな会社だと思いました。面白がって門戸を開いてくれましたからね。この動きが、少しずつ周りにも影響を与えつつあるようで、一緒にやりたいと言ってくれる他社さんも増えてきました。私たちのプロジェクトが認知され、ようやくスタートラインに立ったのかなと実感しています。
――今後の目標はいかがですか。
阿南:ドラマもそうだし、アニメも映画もそうですが、ビーグリーさんと一緒に開発した作品を元にメディアミックスを積極的に展開していくのが目標です。
永井:まんが王国は女性向けのコンテンツが強いです。いわゆる昼ドラ向きなコンテンツが得意なんですね。今回のコンテストのテーマ設定にもかかわってくるのですが、女性向けの作品はドラマ化しやすい内容なんです。
――確かに、女性向けの漫画には昼ドラ向きな作品がたくさんありますね。
永井:TikTokやYouTubeのショート動画も女性向けのコンテンツが強くなっています。我々とアミューズさんの強みは、ドラマや実写に向いている女性向けのコンテンツを創出できる点にあると思います。今回のコンテストの受賞作品は、早くも実写化される可能性もあるのです。
阿南:今回は「現代恋愛×ファンタジー」というテーマで募集をしていますが、実は、恋愛ドラマは私自身もトライしたいとずっと思っていたんです。女性向けのコンテンツを一緒に生み出せるのは、率直に嬉しいですね。
「現代恋愛×ファンタジー」募集中、手ごたえはどうか?
――コンテストの募集は既に始まっていますが、反響はどうでしょうか。
永井:募集締切が10月末です。ノベルバのコンテストはいわゆる異世界転生、女性ものだと悪役令嬢が二大巨頭でしたが、今回は「現代恋愛×ファンタジー」ということで、応募者にはハードルが若干高いかもしれません。とはいえ、現代恋愛は大手出版社の方も関心を示しておられますし、今後、業界内でも注目されていくジャンルだと思います。
阿南:ただし、メディアミックスというか、映像化など次の展開を意識しすぎると、10年後に残るコンテンツになるのか、という不安はあります。『SLAM DUNK』は僕らが学生の時に見ていて、未だに泣けますよね。長く愛されている日本の漫画は、新しいジャンルを創ろうと、必死に目の前の作品と向き合った結果、生まれてきた経緯があるわけですから。
――おっしゃる通りだと思います。
阿南:今回のコンテストで、今後残っていく可能性を秘めた作品があれば大成功だと思います。グローバル展開を考えたときに、作品には「日本らしさ」が必要だと思います。海外の方から以前「最初から世界を意識してやっていくと失敗する」「日本の人に向けてやれば漫画やアニメは勝てる」と言われ、とても納得しました。そういう意味では、現代恋愛とファンタジーって、とても日本っぽい作品だと思いますし、今後世界に広がっていくだろうという自信があります。
未来を見据えてどんな一手を打つのか
――今後の展開と目標について教えていただけますか。
阿南:オリジナルのIPをもち、そのIPを元にメディアミックスを展開できるパイオニアになりたいです。私は、尊敬する大先輩に「おまえは才能がないんだから、周りに助けてもらう才能を身につけろ」と言われたことがあります。現在でもその言葉は、プロデュースに徹していく指針となっています。今後もその道のプロ、スタークリエイターの方々のお力を借りながらも頑張っていこうと思ってます。
永井:ノベルバのサービスを運営する立場から言うと、ユーザーさんに喜んでもらいたいという思いが一番です。アミューズさんと組んだことで、読者にはドラマ化や動画化などの夢を提供できるようになりますし、クリエイターも自作のメディアミックスという夢を見られますよね。クリエイターとファンをつなぐのが弊社のミッションだと思いますし、それを推進することで業界全体の活性化にもつなげていきたいと考えています。
――コンテンツに関わるみんなが幸せになる、理想的な状況ですね。
阿南:今回のコンテストをきっかけにノベルバ発のコミカライズがヒットして、さらにメディアミックスとして二次展開できたらスタートとしては、物凄い出来事だと思うんです。来年度以降には続々と形になっていくと思いますが、この先の3年間、我々の取り組みが業界に大きなインパクト与えることができるように、ビーグリーさんと緊密に連携し、まずは第1弾の作品を映像化するように尽力していきます。
※本記事内に記載されている社名、商品名は各社の商標または登録商標です
■『目指せメディアミックス!「現代恋愛×ファンタジー」小説コンテスト』概要
コンテスト詳細ページ:https://novelba.com/contests/amuse_beaglee/1
本コンテストでは、初恋、青春から大人の恋愛まで幅広い「現代恋愛」というテーマに、あなたなりの「ファンタジー」なエッセンスを加えた作品を大募集。賞金総額は総額100万円。さらに、アミューズ賞、ビーグリー賞に選出された作品はコミカライズが確約される。
ご自身が生み出したキャラクターや世界観を多くの人に見てもらえるチャンスですので、ぜひ奮って応募しよう。
■応募要件
テーマ:「現代恋愛×ファンタジー」
日常生活で起こりえるかも…?といったリアリティあふれる現代的な恋愛に、ファンタジー要素を加えた作品をお願いします。設定は学生でも社会人でもOK!ただし主人公は女性でお願いいたします。
■「現代的な恋愛」キーワード
初恋/青春/大人の恋/オフィスラブ/ワンナイトラブ/格差恋愛/甘々/不倫/年下男子×年上女子/結婚/復讐/裏切り/ヤンデレ
■「ファンタジー」キーワード
男女逆転/タイムリープ/呪い/死別/幽霊/魔法/禁断の恋/障害/記憶喪失/擬人化/夢
■応募資格
初めて小説を書いた方からプロの作家さんまで、どなたでも参加OK!
■文字数
50,000文字以上
※完結が望ましいですが、物語としてまとまっていれば未完結でも問題ありません。
※必ず800文字以内での「あらすじ」を作成した上でのご投稿をお願いいたします。
作品:オリジナル限定。未出版かつ作品著作権が投稿者本人に帰属している作品が応募できます。
■スケジュール
受付開始:2023年7月21日(金)
受付終了:2023年10月22日(日)
結果発表:2023年11月下旬発表予定
■各賞について
◇アミューズ賞(最大1作品)
・1作品あたり賞金30万円+コミカライズ確約
◇ビーグリー賞(最大1作品)
・1作品あたり賞金30万円+コミカライズ確約
◇優秀賞(最大4作品)
・1作品あたり賞金10万円
※作品によっては優秀賞でもコミカライズされる場合がございます。
※入選作品についてはコミカライズをきっかけとしてアニメ化、ドラマ化や実写映像化などのメディアミックスのご相談をさせていただく可能性もございます。
■応募方法
①『ノベルバ』のアプリもしくはWeb サイトにて作品を公開
②作品のキーワードに「現代恋愛×ファンタジー小説コンテスト」を追加
※応募の際は全ての募集要項に同意した事になります。
※他コンテストへの重複応募は可能ですが、受賞の際は出版優先権は弊社に生じます。なお、コンテストから落選となった時点で出版優先権は作者様にご返却いたします。
その他、コンテストの詳細につきましては下記を確認しよう。