【漫画】空を飛べないカラス、その翼は何のためにある? SNS漫画『片腕の鴉』がスゴい

「怪しい人が出てくる物語を描きたい」

――まず『片腕の鴉』を制作しようと思った時の状況を教えてください。

bon morry:これまで読切漫画を描いた経験がほぼなかったので、現在の担当編集さんと相談して、「技術的に足りない部分を確かめながら読切を描いてみよう」ということで制作を始めました。

――そこが出発点だったと。

bon morry:はい。以前制作した『マタタキ』という漫画では、キャラが良い人ばかりだったので、「とにかく怪しい人が出てくる、そして良い話ではないものを描きたい」と思って作り始めました。

――少し不気味な世界観ですが、“自分の存在価値を見失って悩んでいる鴉の物語”に共感でき、人間らしい部分も見え隠れする内容でした。

bon morry:翼のように目に見えるものでも、見えないものでも、人はそれぞれ生まれながらに何かしら持ち合わせないものがあるとして、そんな存在が「全てを持ち合わせていることを基準にした世界に何も知らずに産まれたら、その基準が自分にとって当たり前になるのは仕方がないよな」とふと考えたところから始まりました。この考えは私の経験からです。

――そこからストーリーを作り上げたのですね。

bon morry:はい。この考えから漫画として楽しんでもらえるようなキャラクターや設定を作っていきました。「当たり前の世界が行動によって壊れ、外部との接触で、当たり前だと思っていたその世界以外の世界があることを知る」という話を作りたいと思いました。

――物貸屋を登場させた理由は?

bon morry:たまたまその時に見たもの、行きついたものからストーリーを膨らませていくことが多いです。なぜ読んでいたか覚えていないのですが、プロットを考えている時、仏師のインタビュー記事を読んでおり、その影響を受けて物貸屋を登場させました。

セリフ回しは落語を参考に

――玉梅と荒屋を作る際に意識したことは何ですか?

bon morry:人間と人間ではないものをわかりやすく、なおかつ2人が一緒にいてお互いを引き立てられるように、色や大きさに差をつけました。性格について、私はキャラを作り上げる際、「好きなこと」「嫌なこと」などの項目を作るのですが、今回は「嘘をつくか」という項目が2人の性格を捉えやすくしてくれたと思っています。「嘘をつくか、つくならどんな嘘か、何のために嘘をつくのか、嘘をつかれたらどう思うのか」という感じで、性格を決めていきました。

――鴉も物貸屋もどちらも話し方とビジュアルがとてもフィットしていました。

bon morry:玉梅は生真面目で自分を疑わず白か黒かの世界で生きている、自分が主体のセリフや言い切りのセリフにすることを意識しました。荒屋は逆にグレーの中で生きている、10のセリフからやっと1が透けて見える、そんな言葉選びを意識しました。フィクションと現実の橋渡しのようなトーンにしたかったため、荒屋の言い回しは落語を参考にしています。

――物貸屋や雑木林など建物や背景もしっかり描かれていました。

bon morry:ありがとうございます。「江戸東京たてもの園」にある武居三省堂が大好きで、武居三省堂に加えて、似たような構えの建物を参考にして物貸屋を作りました。ごちゃごちゃ物が置いてある不思議な空間が好きなのですが、アイテムを考えるのが苦手なので引き出しが多めの内装になっています。雑木林はイメージに合う風景写真をたくさん見て参考にしています。森や林が身近にあるので土の匂いなどを思い出しながら描いていました。

――最後に漫画制作における目標を教えてください!

bon morry:現在連載を目指して企画を作っています。少しでも気になってもらえたらSNSをフォローしていただけると嬉しいです!

■作品の続きはこちらから
https://twitter.com/bon_morry/status/1706987569416941778

関連記事