『アンデッドアンラック』ジャンプ“否”王道のラブストーリーだーー全編クライマックスの超注目作

 何より本作最大の魅力は「否定の力」を持つアンディたちの異能力バトルだ。荒木飛呂彦が『ジョジョの奇妙な冒険』(集英社、以下『ジョジョ』)が「スタンド」と呼ばれる可視化された超能力を用いた戦いを描いて以降、人知を超えた力を持つ能力者たちのバトルを描いた異能力バトルは、ジャンプ漫画の定番ジャンルとして定着している。

 しかし、ジャンプで連載されている近年の異能力バトル漫画は、能力が複雑に成りすぎて、バトルがどんどん難解になっている。

 同時に複数の能力者たちのチーム戦を描く群像劇も増えている、その結果、バトルと人間関係が複雑化して連載が長期化しており、異能力バトル漫画は、進化の袋小路に陥ってしまったように思える。

 対して『アンデラ』は「否定の力」を持った能力者たちが対立や共闘を繰り返しながら、巨大な敵に立ち向かっていく壮大な物語だが、劇中に登場する異能力のアイデア自体には新味がなく、『ジョジョ』等の過去作でやり尽くされたものばかりだ。

 しかし、能力の見せ方や話の転がし方が秀逸で、既存のアイデアを新しい解釈で見せようと毎回腐心している。とは言え、異能力、登場人物、設定が膨大かつ過剰なため『アンデラ』もまた、話数を重ねる事に物語の複雑化は進行している。だが、情報の見せ方がとても巧みなので、濃密なエピソードがテンポよく圧縮されて展開されている。

 つまり『アンデラ』は、既存のアイデアの見せ方と解釈の幅を広げることによって、進化の袋小路に陥っていた異能力バトルの可能性を大きく広げた漫画だと言えよう。

 最後に、何より驚かされるのが、物語の完成度の高さである。コミックスは現在、18巻まで刊行されているのだが、序盤に登場した登場人物や、オンラインRPGを現実化したような精密な設定が、最後まで活かされた作りとなっている。だから、無駄な部分が一切ないため、話数を重ねる事に面白さが増している。

 今回のアニメ化によって『アンデラ』の人気は拡大し、新規読者を多数生み出すだろうが、これから全話一気読みする読者が受ける衝撃を思うと、今から楽しみである。

 

関連記事