浅野いにお『デデデデ』アニメ映画の注目ポイントは? 原作の独創性を振り返る
本作は浅野いにお自らがモデリングを手掛けた3Dモデルを活用したこれまでにない漫画表現が大きな話題を呼んだことも印象深い。通称“母艦”と呼ばれる巨大な空飛ぶ円盤や、そこから発進している中型船、小型船、いわゆるUFOの斬新かつ新鮮なデザインがアニメでどう再現されるのかは注目のポイントだろう。また『デデデデ』だけでなく、浅野のこれまでの作品でも多用されてきた、彼の作家性とも言えるようなPhotoshopを活用した写実的な絵がアニメではどのように再現されるのかにも注目したい。
本作の主人公である小山門出、そしておんたんこと中川凰蘭の友情以上の結びつきも本作の魅力だろう。門出、そしておんたんの周囲には沢山の友人たちがいて、その友人たちと甘酸っぱくも刹那的で愛おしさの溢れる青春を過ごすのだが、やはりその中でも門出とおんたんの結びつきは別格であることが随所で伺える。象徴的なのはコミックス8巻から9巻にかけて描かれる門出とおんたんの過去編。2人が単なる絆ではなく、ありとあらゆる意味で一蓮托生であることが示唆されるこのエピソードは、映画ではどのように映像化されるのか。
ここまで紹介してきた通り、絵、ストーリーと共に交差するリアルさとフィクショナルさが『デデデデ』の読みどころだ。それは現実の社会で生きていく辛さ、そしてそれでもなんとか生き甲斐を探しながら生きていく我々市井の人間の写し鏡のように作用する。ぜひ映画公開前に本作を改めて読み返してみてほしい。日々辛さを増す2023年の世界で『デデデデ』を読めば、きっとこの世界の見え方が変わるはずだ。