『伊集院静さんが好きすぎて』 三又又三さんと行く、聖地巡礼旅・なぎさホテル

 私生活のすべてが伊集院静「脳」になってしまったという放送作の澤井直人。彼がここまで伊集院静さんを愛すようになったのは、なぜなのか。伊集院静さんへの偏愛、日々の伊集院静的行動をとことん綴るエッセイ。

  今回は、“芸能界きっての伊集院静通”お笑い芸人の三又又三さんと伊集院静さんが若かりし頃に住んだ場所であり小説の舞台となった今は亡き「なぎさホテル」の跡地に足を運んできた。

【独白】私生活のすべての思考は「伊集院静ならこの時どうする?」気鋭の放送作家・澤井直人がここまでハマった理由

私は、東京でバラエティ番組を中心に活動している32歳平成生まれの放送作家だ。  上京したのは、23歳(2013年)の春のこと。…

なぎさホテル跡地。現在は「夢庵 逗子店」となっている。眼前には逗子海岸が広がる。

澤井:三又さん、本日はありがとうございます。本当に良い天気になりましたね。

三又:晴れたね〜。

澤井:三又さんとは、ひょんなことがキッカケで繋がったんですよね。

三又:俺がX(旧・Twitter)に伊集院静の投稿をしたときに、1人だけ、“いいね”と“リポスト”をしてきた奴がいて。 プロフィールを見ると、誰だこの放送作家は? って。

澤井:僕は、毎日Xで“伊集院静”でエゴサーチをかけていて、 全て見に行くようにしているんです。そこでたまたま、 三又さんが伊集院さんのツイートをされていて。 昔、どこかの媒体で三又さんが伊集院作品のお話をされていたのを覚えていて。

三又:それ、BOOKSTAND.TVだ。

澤井:それで三又さんからDMが来て、SNSを通して繋がりました。

三又:SNSで、そんなまともな繋がりがあるんだって。

澤井:その勢いのまま、翌週には...…。中野の居酒屋を3軒ほどハシゴしましたね。

三又:共通言語って怖いもので、 澤井君とは、はじめてじゃない感じがしたんだよね。

澤井:以前から、伊集院さんの聖地巡礼をこの連載内でしていまして。 前回は、池袋の横山さんという元巨人の投手がやっているうどん屋の「立山」さんに行ってきたんですけれど、なぎさホテルの聖地巡礼はどこかでしたいと思っていたんです。

三又:俺はこの海岸に夏に来たのは初めて。 前に来たときは冬だったのよ。俺は兄を白血病で亡くした。 そのときに出合ったのが伊集院さんの『いねむり先生』という作品。 それで、作中に出てくる逗子に来て、鎌倉の本屋に入ったとき 手に取ったのが小説の『なぎさホテル』だった。 迷わずに購入して、ホテルに一泊して8〜9割一気読み。

  そしたらさ当時伊集院さんはなぎさホテルに住んでいて、交際していた夏目雅子さんを白血病で亡くされたことを知ったんだけど、そのことが自分の兄を亡くした体験と重なってさ。だから最終章はこの「なぎさホテル」の跡地「夢庵」の前で読もうと思わず向かったのよ。

なぎさホテル跡地にある石碑。
当時のなぎさホテル

三又:小説の名シーンといえばさ、伊集院さんが昼間からビール飲んでぼんやり海を見ていたら、後ろから「昼間、海のそばで飲むビールは美味しいもんでしょう」と声をかけられるところ。

澤井:それが、逗留することになる 「逗子なぎさホテル」の I 支配人だったんですよね。

三又:そう、その場所がまさにココだね。そこから伊集院さんは7年余りもなぎさホテルに住むんだよね。 人たらしを超えているよ。だってそれだけじゃなくて、支配人からお小遣いをもらって六本木遊びに行っていたんだから(笑)。

澤井:とんでもないですよね。 でも、支配人はそれを喜んでやっているんですよね。

三又:そうそう。それに憧れたさ、僕も伊集院さんみたいに右手に缶ビール、左手におでんで同じようなことやってみたの。心の中では、「あ〜おれにも支配人のように 後ろから声をかけてきて、お金貰えねえかな〜」って考えて。 そしたらさ、後ろから来たんだよ!

澤井:え! 誰が来たんですか!?

三又:トンビが(笑) しかもおでんを襲ってきやがって、おでんの汁でビッシャビシャよ!

澤井:!!!(笑)

三又:ここが、伊集院静と三又又三の違いだよね。 伊集院さんは支配人に声をかけられて、 おれはトンビに襲われるっていう。でもね。良いネタできたな〜って思って歩いていたらさ、忘れもしない。革のライダースジャケットを着たロッカーの男性とすれ違ったんだよね。 どこかで見たことあるぞと。

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