葦原海 × 乙武洋匡 超ポジティブ対談 車椅子ユーザーだからこそ見えた美しい景色

乙武さんは、これまでどんなふうに恋愛を?

乙武:僕と葦原さんの“車椅子ユーザーであること”以外の共通点を挙げるとしたら、恋愛に対して臆していないところだと思うんですよ。葦原さんの著書に、歌舞伎町でホスト風の男性にナンパされて「(ナンパはやっぱりお断りだけど、)声をかけていただくのは、とてもうれしい」といったエピソードが書かれていましたけど、とても素直な感想ですよね。

みゅう:ナンパは見た目で判断するものだから、車椅子に乗っている時点で、声をかけられる対象からは除外されるものだと思い込んでいたんです。でも「顔が好みだから」と声をかけられることもあって、ビックリしたんですよね。

乙武:僕が若い頃は、障がい者がモテる、ナンパされるなんて、あり得ないことでした。やっぱり障がい者はかわいそうな存在で、守ってあげなきゃいけない弱者。障がい者同士が恋愛するパターンはあっても、健常者が障がい者に恋心を抱くのは本当に稀なケースだったんです。だからこそ僕は、障がいがあるという理由で恋愛弱者にはなりたくなかったし、そのためにもなるべくおしゃれでありたいと思っていました。

 そういう意味でも、葦原さんの存在には強い希望を感じますね。障がい者でも「モテたい」「恋したい」と思って良いんだって。著書やインタビューを読ませていただくと、そうポジティブに感じられますよ。

みゅう:でも私、自分から人を好きになれないんです。健常者だった頃も、一度も自分から誰かを好きになったことがなくて。乙武さんは、スゴくモテる方だとお聞きしたんですが、これまでどんなふうに恋愛して来られたんですか?

乙武:いや、自分がモテているとは思いませんが、ただ“モテる”にも2種類あると思っているんです。周囲から言い寄られるモテと、狩りに行けばちゃんと仕留められるモテ。僕はやっぱり後者で、必ず自分から好きになって、自分からアタックしていました。だって、何もせず待っていても誰も来ないですもん(笑)。そこはガツガツいかないと!

みゅう:な、なるほど! 狩りに行かれていたんですね!!(笑) てっきり、乙武さんの明るい生き方や人柄に惹かれた多くの女性に言い寄られているものとばかり……。

乙武:うーん、どちらかというと恋愛対象というよりリスペクトの対象になっちゃうんですよねぇ。

みゅう:恋愛にリスペクトって大事じゃないですか? 私、尊敬できない方とはお付き合いできないと思いますよ。

乙武:アハハ。確かに。難しいですね。リスペクトで終わる場合もあれば、リスペクトから恋愛に発展する場合もあるだろうし。

みゅう:一緒に時間を過ごす中で、人として好きな方、リスペクトしている方はたくさんいるんです。でも、人として好きになっちゃうと、恋愛のほうに意識を持っていけなくて。かといって自分から恋愛感情を抱くことは基本的にないので、私が人として好きになる前に告白をしてもらわないと、恋愛ができないんですよね……。

乙武:一目惚れもないの?

みゅう:ないです……。

乙武:つまり、好意を寄せてくれた相手に対して、自分が良いと思えるかどうかが恋愛に発展する要(かなめ)になるんですね。それだと自分を好きになってくれて、告白してくれる男性を増やさないといけないわけだけど、自分から好きになれないのに恋愛がしたいのはどうしてなんです?

みゅう:恋愛っていうか、私、結婚式を挙げたくて。子どもの頃から、結婚披露宴に憧れがあるんです。綺麗なドレスを着て、好きな人と結婚披露宴でお祝いされたい。

乙武:結婚式を挙げたいことが、今すぐ恋愛したい理由!?

みゅう:はい! 着たいドレスがたくさんあります!

乙武:分かった。もう、YouTubeの企画にしちゃおう! 「葦原海の恋人を募集します」って、応募者全員を面接して、その中から好きになる人を決めていく。数字も伸びそうだし、良い提案じゃない?

みゅう:えぇ~~!

乙武:僕、司会進行やりますよ!

みゅう:じゃ、じゃあ、乙武さんはどんな方がお好きなんですか?

乙武:えっ、僕の話ですか?

みゅう:自分から好きになって、自分からアタックするとおっしゃっていたので、参考までに……。お話聞きたいです。

乙武:僕は、僕自身の可能性を最後まで信じてくれている、と思える人に惹かれますね。僕には社会的に成し遂げたいことがあるんですけど、それを本当に成し遂げるには、長い道のりを経て、高い壁を乗り越える必要がある。メンタルが強いと言われている僕でさえ、その道中では気持ちが揺らいだり、心が折れそうになったりするはずなので、そういうときに「あなたならやれる!」と、前を向かせてくれる人が隣にいてくれたら良いなぁと、思いますよね。……って、何を喋らされているんだ(笑)。恥ずかしい!

みゅう:アハハ。すみません! でも、参考になりました(笑)。

乙武:ほ、本当に?

みゅう:本当です。ありがとうございました。

乙武:なら、良かったです。でも、あまり僕のことを“先輩”とは思わないでくださいね。恋愛に関してだけじゃなく、車椅子ユーザーとして表に出る人間としても。葦原さんは、僕がリーチできていなかった若い層に訴求力のある存在。自由に、葦原さんらしく発信活動を続けられるのがいちばんですから。

みゅう:ウフフ。あ、ごめんなさい! 失礼ながら「乙武さんみたいになりたい」とは思ったことなかったかも(笑)。人生の先輩として、まだまだお聞きしてみたいことはありますけど、最初にお話ししたように、私は乙武さんのような作家活動はできないし、車椅子ユーザーであること以外は真逆な部分が多いと思っているので私は私らしく発信できていけたらと思っています!

乙武:それを聞いてホッとしました(笑)。まぁ、もし僕でもお役に立てることがあれば、遠慮なく頼ってくださいね。

みゅう:ありがとうございます! 是非、またゆっくりお話しさせてください。よろしくお願いします。

■書籍情報
『私はないものを数えない。』
著者:葦原 海
価格:1,650円
発売日:2023年5月25日
出版社:サンマーク出版

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