【漫画】性格が真逆の両親、円満の秘訣は“父のかわいさ”にアリ? ピースフルな関係性にほのぼの

――本作をアップしてから読者の声などはありました?

山本さほ(以下、山本):「羨ましい」という声がある一方、父がマイペースで母がカリカリしているので「本当はお母さんにストレスがかかっているのでは?」という声もいただいています。母を心配してくださる方のアカウントは同じようにお子さんを持つお母さんが多く、共感を持って読まれてたのかなと。

――単行本『てつおとよしえ』内の1話ということですが、こちらをピックアップしたのはなぜでしょう。

山本:その単行本が4月に発売となったので、その宣伝のためです。私の両親の話ばかりが収録されているのですが、どういう夫婦かが伝わりやすい話だったので「理想の夫婦」を選びました。子どもの頃からずっと見ていた両親のやりとりを落とし込んでいるので、描いていて不思議な感じです。

 もともとの制作のきっかけは新潮社さんから「両親のことを描いてほしい」とリクエストをいただいたこと。忘れていたエピソードも結構ありましたが、頑張って思い出したら1冊分のストーリーになりましたね。私にとっては当たり前の風景なので、それを面白いと思ってもらえるのか心配なところもありました。

――冒頭は両親の関係を不思議だと疑っていましたが、最後はリスペクトに変わる展開もコントラストがあります。

山本:父は温厚で自分勝手な部分もあるのですが、絶対に怒らないところが長所。夫婦でも片方が「ケンカに持ち込まない」というスタンスだと、ケンカに発展しないので彼のような人はパートナーとしていいなとよく考えます。なかなかそういう人もいないですし(笑)。何でも受け流してしまうので、彼が合気道をしている場面は気に入ってますね。

――家族系の漫画だと「親ガチャ」や「毒親」に悩まされる展開のものが多く見受けられるなかで、ほのぼのした作品性がまた際立っているような印象もあります。

山本:そうですね。最近は問題のある家庭を描いたり、両親を批判する作品が出てきやすくなったと感じます。その流れに沿ってはいませんが、私みたいな家庭も多くあるはずなので共感してもらえたら嬉しいです。

――山本さんはエッセイ漫画を多く描かれていますが、ネタが尽きたりはしませんか。

山本:環境が変わったり、新しいことがあったりすると「こういう作品を描きたい」という想いが自然と湧いてくるんですよ。エッセイ漫画脳だと思います。ただ普通の漫画よりも炎上しやすいという特徴もあるので(笑)、あったことを全部は描けませんがアイデアは尽きません。

――炎上対策などで考えていることは?

山本:個人的には「具体的な炎上をたくさん見る」ということは大切だと思います。「この言い回しがよくないな」とか「これで怒る人もいるんだ」と考えることができるので。他人の気持ちを理解するのは難しくて、知識を常にアップデートすることが必要なのではないでしょうか。

 正直「こう書いたら面白いのに」と思いつつ、炎上を考えると諦める瞬間もあります。そこが苦しいところで、表現が狭められているなと感じることもありました。特にネットで無料公開されている漫画については拡散されやすい分、炎上しやすい。そこは自分で描く時も気にしていますね。できる限り誰も傷つけたくないですから、その中で笑える表現を作っていくのは難しい。

――今後描きたい作品などがあればお願いいたします。

山本:エッセイではなく、フィクション漫画で短編集を出せたらと思っています。ウェブでもいいのですが、私は紙媒体で育ってきたので雑誌で描けたら嬉しいですね。将来、雑誌や単行本が音楽におけるレコードみたいなコレクションするものになったら面白いかもしれません。

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