『チェンソーマン』デンジのポジティヴさは異様……印象的すぎる言動を振り返る

 現在「少年ジャンプ+」にて第二部「学園編」が連載中の藤本タツキ『チェンソーマン』。その主人公であるデンジは、異様なまでのポジティヴな言動がその特徴のひとつとなっている。本稿では作中で印象的だったデンジのポジティヴな言動についてフォーカスを当て、デンジの特異性を振り返りたい。

「まあ・・・俺がすっげえ~ドカンと頑張れば大丈Vでしょう!」

 第2巻第13話『銃の悪魔』でデンジが発したセリフ。第一部「公安編」で討つべき最大の敵とされる銃の悪魔は5分間で120万人を殺したという驚異的なスピードと能力を持っている。そんな悪魔の存在をマキマに教えられたデンジだが、マキマの「銃の悪魔を殺してくれたらなんでもしてあげる」という約束を踏まえて発せられたこのセリフは、デンジの欲望への執着がポジティヴに直結したセリフといえるだろう。

「ま!シリアスな事ぁかんがえなくていっか!」

 第4巻29話『100点満点』のワンシーン。同僚の姫野が亡くなったにも関わらず悲しさを抱けないデンジが自問自答する。チェンソーの悪魔に変身する能力を得たことで人の心をなくしたのかもしれないと悩んだ刹那、即座に出てきたのがこのセリフだ。このシーンはこの異様なまでのデンジのポジティヴさを振り返る上で非常に重要なシーンと言える。デンジがチェンソーの悪魔の能力を身にする前と後で彼の感情に変化があったのかどうか。またその理由がポチタによるものなのか、はたまたデンジ自身の環境の変化によるものなのか。それらは作中で示されることは無く、『チェンソーマン』という作品の謎のひとつだ。作品における謎を示したシーンでありつつも、あくまで素直であり単純に物事を考えるデンジのポジティヴを端的に示した描写と言えるだろう。

「全員ぶっ殺しゃあ 江の島行けるっつーことか!」

 第7巻54話『江の島に行くには』のデンジのセリフ。憧れのマキマと江の島旅行へ行く約束を取り付けたデンジだったが、各国の刺客からデンジが狙われていることを知ったマキマが江の島行きの延期を宣言。旅行に行けなくなってしまったデンジはショックを受けるが、同居している早川アキの一言でデンジは立ち直る。1つ前のエピソードで恋慕に近い感情を抱いていたレゼの死に少なからずショックを受けていたデンジが、マキマに江の島行きを誘われるシーンも合わせ、この一連のエピソードではデンジのポジティヴシンキングへの異様な切り替えの早さが分かりやすく明示されている。

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