【漫画】とある女子高生の不幸な一日……でも本当は? 「運」について考えさせられるSNS漫画が面白い

ーー日常の世界と少し不思議な世界が交差する、作品の世界観が魅力的でした。創作のきっ
かけは?

さく兵衛:ついていないなって思う1日があったとき、もしかしたらその1日は1番マシな結
果であり、本当はもっと最悪な事象が起こったのではないかと考えることがよくあります。
そんな風に考えていると人に話したら「面白い」と言われ、この考えを切り口にしたら新し
い漫画が描けるんじゃないかと思い、本作を創作しました。

ーー本作をどのようにつくったのか教えてください。

さく兵衛:まず一見すると最悪だった事象を並べて、別の見方をしたときに最善な事象であ
ったとわかるような構成になるよう考えました。ただ最悪だと思っていたのに実は最善であ
ったという事象を考えることが大変で……。

 バスに乗り遅れて学校に遅刻することが、実は最善な事象であったということを考える際
、最初はバスの車内で不審者が暴れたため主人公はバスに乗らなくてよかったというエピソ
ードを考えました。でも自分以外の人が傷ついて、自分だけ助かるようなお話にすると読後
感がわるくなってしまうと思って。なるべくコミカルにお話が終わるように試行錯誤をしな
がら作中の事象を考えました。

ーー印象に残っているシーンは?

さく兵衛:ラストシーンです。最後にラッキーアイテムが主人公に作用するシーンはどのよ
うに作用するか考えることに1番苦労しつつ、物語の最後には主人公の日常に収束すること
を考えながらラストシーンを描きました。

 藤子・F・不二雄先生の作品のように、日常のなかで事件が起きて、再び日常に戻るとい
ったストーリーをつくりたいと思っていました。本作では想定していた終わり方をすること
ができたため、とくにラストシーンが印象に残っています。

ーーさく兵衛さんは本作のようなSFチックな作品以外にも、エッセイ漫画など、さまざま
な作品を手掛けています。本作に対する印象を教えてください。

さく兵衛:本作を描く前、コミティア(一次創作の即売会)に他の作家さんと一緒に参加し
、その打ち上げで意見交換をするなか「さく兵衛さんの作品には驚きの要素がありますね」
と言ってもらいました。自分の作品を読んでちょっとでもいいから「意外だな」とか「そう
いう考え方もあるんだな」と思ってほしいと考えていたので、その言葉がうれしくて。

 そのあとちゃんと驚きの要素を入れた、自分が描きたいと思うど真ん中の漫画として本作
を描きました。ひさしぶりに自分の描きたいと思うものを、描きたいというテンションのま
ま、描き終えられたので、本作は達成感を覚えた作品となりました。自分の描きたいものが
わからなくなって迷走していたので、自分にとって転換点となる作品のひとつになりました

ーーときに描きたいものを悩んだりなど、漫画を描くことは楽しいことばかりではないかと
思います。漫画を描き続けるための秘訣とは?

さく兵衛:描きたいと思うテンションの波もありますし、まったく漫画を描けない時期もあ
ります。ただ描きたいものがあるという思いは大前提として存在していて、自分であれば人
を驚かせたいとか、女の子のかわいい表情を描きたいというモチベーションがあって。「自
分の描きたいものをひとつでも描ければいいや」という思いで、ハードルを落としながら漫
画を描いています。

ーー漫画を描き続けるなかで感じることは?

さく兵衛:今までは目指すところが高くそびえて見えていたのですが、課題を客観視し、次
につながる改善点を自分で出せるようになってからは、漫画を描くことの楽しさをより感じ
られるようになりました。

 ただ他にやることがあったり執筆が遅かったりなど、自分の描きたいという思いに制作が
追い付かず、ときに苛立ちや焦りを感じることもあります。ただ淡々と描くしかないので、
漫画を描き続けています。

ーー今後の目標を教えてください。

さく兵衛;今まで驚きを表現したいという思いのもと漫画を制作してきましたが、ストーリ
ーの構成に目を向けすぎてしまい、登場人物に目を向けることができていませんでした。読
者の感情を揺さ振ったり、読者から共感されるキャラを描いてこそ、驚きのあるストーリー
が伝わると思うので、魅力的なキャラを描くことを目指しています。

 本作を描いて、やっぱり本作のような漫画が好きだなとわかったので、本作のような方向
で作品を掘り進めていきたいです。

関連記事