ただ、そんなカズマでもしっかりと仲間たちを思っているところに、憎しみではなく親しみを覚えてしまう理由がある。めぐみんの故郷に危機が訪れていると聞けば、一緒に乗り込んでいって襲撃してきた魔王軍の幹部を相手に命をかけて戦ってみせる。死んでもアクアが生き返らせてくれるという安心感はあっても、死ぬときの痛みや恐怖はなかなかのもの。それを乗り越えるだけの情愛をしっかり持って敵に挑むカッコ良さが、カズマをシリーズの主人公たらしめている。

　本当は公爵家の令嬢だったダクネスに結婚の話が舞い込んできた時も、乗り込んでいって邪魔しようとする。そんな振る舞いでめぐみんやダクネスから好意を持たれるカズマがいったい誰を選ぶのか? といったあたりへの興味も誘って繰り広げられるシリーズが、どこに落ち着いたのかは読んで確認してみよう。これもまた強がっていて実は小心者のカズマらしい選択だと言えるだろう。

　キャラクターで言うならアンデッドの王リッチーとして強大な力を持つウィズなど、魔王軍に幹部として名前だけ貸しつつ、アクセルの街で魔法道具店を開いていて、なおかつあまり商売がうまくないという隙を見せて気持ちをくすぐる。アクアが発揮する浄化能力の巻き添えを食らって消えそうになるところなどなかなか愛らしい。同じく魔王軍幹部のバニルも、カズマたちと敵対せずウィズの店に居座って商売に精を出している。その屈することを知らない性格が活力を与える。他にも多士済々のキャラたちの誰かを好きになってしまったら、もう「このすば」から離れられない。

　そうした中で期待が大きいのが、アクセルの街が属するベルゼルグ王国の第一王女アイリスだ。高い戦闘力を持ちモンスターも魔王軍も寄せ付けない強さを誇りながら、カズマをお兄様と呼んで慕いその性格や生活に感化されて変人度を増している。制作が決まっているTVアニメ第3期に登場して来るようなら、強さと愛らしさと面白さでめぐみんやダクネスに並ぶ派閥が生まれることもありそうだ。