『この素晴らしい世界に爆焔を!』めぐみんのポンコツぶりから目が離せない! 「このすば」シリーズ、愛すべき変人たち

 どのキャラクターの変人ぶりに親しみを覚えるか? 暁なつめ「この素晴らしい世界に祝福を!」シリーズを読む人が必ず突きつけられる問題だ。今はTVアニメ『この素晴らしい世界に爆焔を!』のヒロインで魔法使いのめぐみんが、中二病気質を爆裂させてマニアの視線を引きつけているが、他にもとにかく頑丈な美人聖騎士のダクネスがいて、女神なのにどこか抜けているアクアもいてと逸材に事欠かない。そんな変人たちの存在感が、数多ある異世界転生·転移ファンタジーの中で「このすば」シリーズを一頭抜けた作品にしているのだ。

 引きこもりだったサトウカズマが珍しく外に出てトラックにはねられそうになっていた女子高生を見つけ、助けようとして自分がはねられて死んでしまう。実際はトラックに見えたのはトラクターで死因もショック死。おまけに女子高生にケガを負わせてしまうダメっぷりだったことを、死後の世界で出会った女神アクアに笑われたことから、異世界に移る際にアクアを道連れにしてしまう。

 アクアといっしょに異世界にあるアクセルという街に降り立ったカズマは、最初は馬小屋に寝泊まりしながら、街に近づいてくるモンスターを退治してお金を稼いでいたが成果は今ひとつ。もっと効率良く稼ぐにはパーティーを組む必要があると募集をかけたところ、高度な魔法を操れるアークウィザードや騎士でも上級職のクルセイダーが集まってきた。

 どうしてそれほどまでに優秀な人材が新米冒険者のカズマのパーティーに参加したいと言ってくれたの?  それは2人ともドがつく変人だったからだ。

 アークウィザードの方はめぐみんという名前で、確かに魔法使いとしてのレベルは高かったが、使える魔法が超巨大な爆発を起こす爆裂魔法だけ。それも1回撃ったら倒れて使いものにならなくなる体たらくで、他のパーティーから参加を断られていた。性格も現代で言うところの中二病気質。というより出身の紅魔族事態がある理由からそうした気質を持った種族で、傍目には頭のおかしい人々だと思われていた。

 スピンオフ小説やTVアニメの『この素晴らしい世界に爆焔を!』では、そんな紅魔族たちの里に生まれためぐみんの魔法学園·レッドプリズンでの日々が描かれている。登場する同級生たちの名前が「ゆんゆん」「あるえ」「どどんこ」「ふにふら」と揃いも揃って奇妙なものばかり。「あるえ」などなかなかの美貌を持っているのに、片方の目を魔力を抑えるという触れこみの眼帯で被っている。

 つまりは、ファンタジー世界に憧れた少年少女が、自分を他とは違った存在と思いたがる気質を、生まれた時から死ぬまで持ち続けているのが紅魔族たち。その振る舞いのすべてがパロディとしての笑いを誘いつつ、自身の古傷がえぐられるような痛みももたらして目を離さなくさせるのだ。

 「このすば」本編でもめぐみんは、カズマたちのパーティーに入って爆裂魔法を撃っては倒れるポンコツぶりを見せくれる。ただ、他の上級魔法を覚えようとすればすぐにだって覚えられる天才でありながら、爆裂魔法にこだわりつづける信念のようなものが感じられて、カズマも読者も支えてあげたいと思えてくる。めぐみん派の誕生だ。

 いやいや、そんな危ない奴にはなびかないぞという人も、めぐみんに続いてパーティーへの参加を希望してきたダクネスには惹かれざるを得ないだろう。まず美女である。そしてグラマラスである。子供のような愛らしさがあるめぐみんとは逆方向の魅力を放ってグッと迫ってくる美女に転ばない人などいない。

 もっとも、そんなダクネスに対するカズマの反応が妙に鈍かったのは、彼女もまた突き抜けた変人だったからだ。クルセイダーでありながら、振るう剣のことごとくが敵に当たらない。それでは反撃されて死んでしまうものだが、ダクネスには異常なまでの耐久力があってどんな攻撃でも跳ね返してしまう。なおかつそうした攻撃を心でも肉体でも喜んでいる節がある。もはや変態の領域に入るダクネスのそんな振る舞いに引きつつも、関心をくすぐられてしまったらもう終わり。ダクネス派の仲間入りだ。

 そんな変人2人に、魔物などを浄化するアークプリーストとしての能力は異常に高いものを持ちながら、怠惰な上に思い込みの激しい"駄女神"のアクアを入れたカズマのパーティーが、さまざまな冒険を繰り広げ、魔王軍の幹部たちとの戦いもくぐりぬけ、最終的に魔王に挑むといったところが「このすば」シリーズ本編の流れ。その中ではカズマの勝つためには手段を選ばないゲスっぷりも発揮され、変人たちのリーダーに相応しいと思わせてくれる。

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