「ちゃお」発行部数100万部突破に貢献した伝説的漫画 『ミルモでポン!』18年ぶりに新作読切が登場
現在もっとも発行部数が多い少女漫画雑誌は何かご存じだろうか。実は、この質問に正しくこたえられるかどうかで、世代が意外とわかるのだが、あなたの答えはなんだろうか。「りぼん」? それは不正解。正解は「ちゃお」だ。
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1990年代前半、「りぼん」は約250万部を発行したとされ、少女漫画ナンバーワンの地位を独走していた。続く「なかよし」も約200万部といわれる中、「ちゃお」はというと約40万部に過ぎなかった。
ところが、1990年代後半になると「ちゃお」の部数が急激に伸びていく。対して、「りぼん」「なかよし」は急激に部数を落としていくのだ。そして、「ちゃお」は2002年にはついに100万部を突破し、少女漫画のナンバーワンになるのだ。その原動力となったのが、篠塚ひろむの漫画『ミルモでポン!』なのである。2002年からは『わがまま☆フェアリー ミルモでポン!』というタイトルでアニメ化され、「ちゃお」を代表するメガヒット作となった。
1990年代後半から2000年代前半といえば、アニメファンの界隈では「なかよし」で連載された『カードキャプターさくら』が人気で、メディアミックスがさかんに行われていた。しかし、『さくら』は確かに人気を獲得したものの、連載中に「なかよし」の部数は30万部ほど落ち、2000年時点では約50万部となっている。雑誌の部数上昇にはあまり寄与しなかった。
対して、子どもの心をがっちりと掴む誌面作りをして堅実に部数を伸ばしていったのが「ちゃお」だった。しばし、「ちゃお」は付録が豪華だから部数が伸びたと説明する漫画評論家がいるが、それは大きな誤解である。
少女漫画雑誌の付録合戦は当時から盛んではあったものの、決して毎号豪華になるわけでもない。付録効果で部数が伸びたとしてもそれは一時的なものだし、『ミルモでポン!』連載当時は雑誌の付録には制約が多かった。現在の「ちゃお」には、おそうじロボなどの“家電製品”や子どもに人気のブランドとコラボした“ブランドバッグ”がつくことはあるが、2000年頃はそれが不可能だった。
漫画が面白くなければ、雑誌の部数は伸びないのである。「ちゃお」はしっかりと小学生の女の子というターゲット層に狙いを定め、真剣に漫画を作っていった。その成果が表れたのが『ミルモでポン!』であったし、100万部突破と言う快進撃につながったといえよう。『ミルモでポン!』はその後の『きらりん☆レボリューション』と並んで、「ちゃお」の黄金時代を築いた名作といえる。
そんな『ミルモでポン!』だが、6月2日発売「ちゃお」7月号に実に18年ぶりとなる新作読切が掲載されている。2005年の完結以来、初という。これを受けてTwitterでは「懐かしい!」「読んでいました!」などと、当時小学生だったファンが歓喜している。作者の篠塚ひろむは現在も「ちゃお」を中心に活躍する現役漫画家であり、当時のような丸っこい絵柄も健在だ。
ところで、現在の「ちゃお」「なかよし」「りぼん」の発行部数は以下のようになっている。
「ちゃお」…14万7500部
「りぼん」 …12万5000部
「なかよし」 …4万3000部
※いずれも日本雑誌協会が発表した、
2023年1月〜3月の3ヶ月毎の平均印刷部数のデータによる。
「なかよし」の部数減が深刻であり、「ちゃお」は依然として少女漫画雑誌のトップではあるものの、15万部を割ってしまった。少女漫画雑誌は、小学生くらいの女の子にとっての漫画の入口であるといわれるが、現在ではいきなり「週刊少年ジャンプ」を読み出したり、「まんがタイムきらら」を読む女の子もいるという。
興味関心の多様化を裏付けるデータとエピソードといえるが、少女漫画雑誌からは長らくメガヒットが出ていない状況にある。漫画家と出版社の今後の奮闘を期待したい。