花沢健吾『アンダーニンジャ』が共感と興奮を誘う理由……“普通の人”が”普通”の技を極めたバトル描写
“達人”ではない一般人たちのバトル描写
『アンダーニンジャ』のさらなる魅力は、忍者たちのバトル描写に隠されている。忍者の身のこなしは一般人とは比べ物にならないが、かといって特別な技能に依存しているわけではない。
機転を利かせ、相手の裏をかいたりだまし討ちを仕掛けたりすることで、勝利を収めようとする。忍術もそうした手段の1つであり、コンビニのおでんを使った身代わりの術など、一般人が想像できる戦い方ばかりなのだ。
いわば同作の忍者たちは、一般的な技能を極限まで磨き上げた“どこにでもいる人間”のレベル100のような存在だと言える。だからこそ読者が「自分ならこうする」と想像する余地があり、共感を誘うのだろう。
一般人が共感できるバトル漫画という意味では、『アンダーニンジャ』から木多康昭の『喧嘩稼業』『喧嘩商売』を連想することも難しくない。
同作の主人公・佐藤十兵衛は、“知略”を最大の強みとしているのが特徴。格闘技の達人ならではのテクニックではなく、その場にあるものを凶器としたり、相手を心理的に翻弄したりすることで勝利を収めていく。
ただ、『アンダーニンジャ』の場合にはSF設定というスパイスが加わっていることにも触れるべきだろう。忍者たちは、科学技術を活かした“忍具”によってバトルを行うのが当たり前。光学迷彩による隠れ身の術や、小型ドローンの手裏剣などが飛び交っており、今まで見たことがない現代的忍者ワールドが構築されている。
現代社会を地盤として、新たな形の忍者像を提示する『アンダーニンジャ』。今後いかにして読者の想像力を刺激してくれるのか、期待が高まるばかりだ。