『名探偵コナン』ラム編は大きな転換点となるーーかつてない展開となった最新103巻を読み解く

 このラム編について特筆すべきなのは、脇田の正体がラムであるということを、コナンよりも先に我々読者が知ってしまったという点だ。これまでのベルモット編、バーボン編のいずれも各シリーズにおける組織メンバーの正体が読者に提示されたのは、コナンがその正体を知るのと同じタイミングであった。先立って読者がそのシリーズの核となるキャラクターの正体を知るという、これまでにない展開のラム編。果たしてコナンが脇田の正体にいつ気がつくのか。はたまた正体に気が付いたという描写が作中で描かれていないだけで、コナンは既に気付いているのか。最新刊である103巻では脇田とコナンが意味ありげに会話するシーンも描かれている。いずれ描かれるコナンが脇田の正体に気付く展開は、今後の『名探偵コナン』という作品の大きな転換点となるだろう。

 さらに今後のラム編の展開を考えるうえで注目したいのは若狭留美の動向だ。ラム候補のひとりであった若狭。脇田=ラムが確定した今もなお、その正体はベールに包まれたままだ。APTX4869の被験者リストにその名前が記載され、17年前に殺害された羽田浩司の事件に若狭が関与しているとされているが、その真実は未だに謎のまま。今秋発売予定の104巻では若狭の正体や目的が明らかになるのか。ぜひこの夏は『名探偵コナン』を読みながら、来たる新刊への期待を膨らませてほしい。

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