【LINEマンガ】「当初のコンセプトは教室での回し読み」森啓取締役COOが語る 「ユーザー視点で徹底的に改善を進めた10年間」


■LINEマンガで読めるおすすめwebtoon作品

――日本から世界を席巻するようなwebtoonが出てくることに期待したいですね。LINEマンガで読めるおすすめのwebtoonについても聞かせてください。

 

森:個人的な意見になってしまいますが、現行の人気作でいうと、『入学傭兵』は非常にお勧めです。
飛行機事故で行方不明になり、その後、記憶を失ったまま最強の傭兵として戦地を生き抜いてきた主人公が、故郷に帰還して普通の高校生活を始める……という物語で、一見、バトルものに思われるのですが、実はヒューマンドラマなんです。再会した家族を何よりも大切に生きる、家族にとって最高に強くて優しくてカッコいいお兄ちゃん。とても魅力的です。

 いわゆる異世界転生系では、人気作の『史上最高の領地設計士』が面白いですね。愛読していた小説の主人公……ではなく、男爵家のダメな息子に転生してしまった男が、現実社会での知見を活かしながら、その家を救い、街の人からも信頼を得ていく。非常にテンポがよく、スカッとする要素が多くておすすめです。

『入学傭兵』の作品詳細はこちらから!
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 すでに完結しているのですが『ザ・ボクサー』も読んでいただきたい作品です。ハードボイルドで、「webtoonにもこういう作品があるんだ!」と思える代表的な漫画だと思います。タイトル通りボクシングをテーマにした作品で、敵も含めて全員が主人公になれるようなキャラクター作り、冒頭の展開の意外性など、とても読み応えのある名作だと思います。

もうひとつ、ビジネスパーソンにおすすめしたいのが『真なる男』。大企業で社長になったとき、周囲に祝ってくれる人が誰もいなくて、かつて信頼を寄せていた仲間が自ら命を絶って……という男が、入社直前にタイムスリップして人生をやり直していく物語です。いわゆるチート能力などを使わずに経験や具体的なプランで未来を変えていくんですね。手軽に読めて、ビジネスものとしても楽しんでいただける作品だと思います。

『ザ・ボクサー』の作品詳細はこちらから!
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■webtoonのスポーツ作品に期待

――いずれもトレンドに即していながらフックがあり、ハマってしまう作品ですね。

森:従来の漫画のヒット作にも通じるところですが、ドーパミンが出るような気持ちよさがあり、カタルシスを感じる作品が多いです。このようにジャンルの幅も広がっており、今後はまだ人気作と言えるタイトルのないスポーツなどのジャンルにも期待したいですね。韓国発の作品にはバスケットボールやサッカーをテーマにした作品もありますし、漫画大国の日本から優れた作品が飛び出してくるのが、一読者としても楽しみです。

■読者がいい作品を伝え合える、新しい流通の形を実現したい

――さて、10年という節目を迎えて、この先、LINEマンガはどんなことを実現したいと考えているのでしょうか。

森:ひとつには、「この作品が面白い!」という伝え方、コミュニケーションの部分で、まだまだ変える余地があると考えています。「LINE」というコミュニケーションアプリを母体としていることもあり、当初のコンセプトは、実は「教室での回し読み」でした。そうやって読者が良い作品を伝え合える、新しい流通の形を実現したいですね。同様に、ユーザーがより作品を選びやすいような仕組みについても改善余地があると思います。TikTokやYouTubeを見ていると、自分が使う時間をユーザーが非常にスピーディに選択する時代になっていることがよくわかります。電子書籍は読んでもらうための手法については変化していきましたが、作品自体を伝えるという意味ではあまり変化はありませんでした。
すぐに作品の魅力がわかり、「よし、読んでみよう」と思えるような伝え方、人と人とのコミュケーションのなかでの広がりというところはチャレンジしていきたいと考えています。

 もうひとつは、グローバルの流通の仕組みを確立して、漫画の市場がより発展していくことに貢献できればという思いがあります。音楽や動画であれば、グローバルに展開しているサービスに登録するだけで、全世界のユーザーに流通させることができ、全世界の作品を楽しむことができます。漫画においては翻訳が必要になりますが、簡単かつスピーディに、全世界で幅広く作品を読んでもらえる環境の構築を進められたらと考えています。

――翻訳、ローカライズも、AIを駆使するなど半分自動化できるようになりそうですし、次の10年も大きな変化がありそうですね。

森:例えばBTSとのコラボ作品『7FATES: CHAKHO』などは、全世界10言語同時公開していますが、これを手動で運用するのではなく、あらゆる作品でできるような環境が数年以内に整ってくると思います。そのなかで日本の作家・作品が思わぬ国や地域でヒットすることも出てくるでしょうし、逆にわれわれもこれまでは知らなかった他国の素晴らしい作品に触れられる機会が増えていくと思います。作品の感想を見るといろんな国の言葉で書かれているような世界が出来上がると面白いなと考えており、そういう時代になると、日本のこれまでの漫画作品のストックというものが、非常に大きな資産になっていくのではと。20年前、30年前の作品がどこかの国では新鮮で、今から大ヒットするかもしれませんし、そこで作家さんに収益を還元できればいい。そんな環境を実現するために、次の10年も日々、努力を続けていきたいですね。

『7FATES: CHAKHO』の作品詳細はこちら!
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