『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』炭治郎の戦闘シーンの変化……原作とは異なるアニメの“演出”

アニメの特性を活かした演出の数々

 アニメ『鬼滅の刃』刀鍛冶の里編では、逆に原作にはない“音”を追加する演出も試みられていた。第5話、甘露寺蜜璃が里長の救出に駆け付け、恋の呼吸 壱ノ型「初恋のわななき」で金魚の鬼を一刀両断するシーンでのことだ。

 原作では見開き2ページで、あえて擬音なしの演出が行われていたが、アニメでは鬼の体がバラバラになる際、軽やかな効果音が流れている。おそらくその意図としては、恋の呼吸には派手なエフェクトが出ないため、視覚の代わりに聴覚的な演出を工夫したのではないだろうか。

 こうしたアニメならではの演出は、ほかにも随所に仕込まれていた。第1話では神崎アオイの回想によって、昏睡から目を覚ました我妻善逸の近況が明かされるのだが、これはアニメオリジナルの描写だ。

 同シーンでは遠方で任務に就いている善逸が、その場にいないはずのナレーション役・アオイに対して「アオイさん、今俺のこと思い出してる!?」と執拗に語り掛けるシーンが登場。同作では珍しいメタフィクション的な演出となっていた。

 演出の意図を深読みするなら、刀鍛冶の里編であまり出番がない善逸の存在感をアピールするためだった……とも考えられそうだ。

 アニメ『鬼滅の刃』は作画やエフェクトが注目を集めることが多いが、演出法にもさまざまな工夫が見られる。いかにして原作の再現度を高めているのか、ぜひ注目してみてほしい。

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