『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』炭治郎の戦闘シーンの変化……原作とは異なるアニメの“演出”

※本稿はアニメ『鬼滅の刃』刀鍛冶の里編のネタバレを含みます。

 現在、フジテレビ系で好評放送中のアニメ『鬼滅の刃』刀鍛冶の里編。「週刊少年ジャンプ」の人気漫画を忠実に映像化している同作だが、実は原作とアニメ版の間にはさまざまな違いが見受けられる。

 今回はそのなかでも意外と気づきにくい、“演出法”の違いに注目してみよう。

 原作『鬼滅の刃』を読んだことがある人なら分かる通り、作者の吾峠呼世晴は擬音の使い方が特徴的な漫画家だ。アクションシーンではコマをまたぐほどに巨大な擬音の描き文字がページ上を飛び交い、迫力がある絵作りを徹底している。

 刀鍛冶の里編でいえば、時透無一郎が絡繰人形「縁壱零式」と剣戟を繰り広げる場面が印象的だ。原作の同シーンでは、「ギャギャギャギャ」という描き文字が画面を埋め尽くし、絡繰人形の異常なスピード感が表現されていた。

 また、上弦の肆・半天狗が無一郎と炭治郎のいる部屋に滑り込んでくる場面では、「ぬらり」という特大の描き文字が不気味さを助長している。

 ところがアニメでは、基本的に擬音が文字として映し出されることはないため、“絵作りとしての擬音”は成立しない。そこでアニメ『鬼滅の刃』刀鍛冶の里編では、SEによって独特の擬音を再現しているほか、「あえて擬音を再現しない」というアプローチをとることも多い。

 たとえば第2話で描かれた無一郎と絡繰人形の殺陣では、「ギャギャギャギャ」という音が一切登場せず、高速で華麗な身のこなしを見せる両者の動きが、ハイクオリティな作画で表現されている。

 また半天狗が部屋に侵入してくる第3話のシーンでも、擬音らしきものは控えめだ。“ぬらり”とした動きが、スローモーションの作画によって表現されていた。

 ほかにも第4話、団扇の強風で炭治郎と禰豆子が床に押し付けられるシーン。原作では6つの擬音が画面を埋め尽くしていたが、アニメではSEは控えめに。2人を演じる声優・花江夏樹と鬼頭明里の演技やエフェクト演出によって、迫力を生んでいる。

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