【連載】『ガンダムZZ』は“見なくていい”作品なのか?

『ガンダムZZ』に登場した“ダミーバルーン製造装置”のレアさ 理屈は謎だが演出としてしっかり機能

 多くのファンを抱える『機動戦士ガンダム』シリーズにおいて、何かと不遇な『ガンダムZZ』。はたして本当に“見なくていい”作品なのか? 令和のいま、ミリタリー作品に詳しくプラモデルも愛好するライターのしげるが、一話ごとにじっくりレビューしていく。

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【連載第一回】第一話から「総集編」の不穏な幕開け
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第九話 宇宙のジュドー

[あらすじ]
 シャングリラから出航したアーガマを追撃するべく、マシュマーはエンドラを出撃させる。一方で、アーガマは大量のデブリのせいでラビアンローズと合流できずにいた。

 アーガマでは、シャングリラ内と打って変わってピリピリした態度になったブライトが、新人クルーとなったビーチャとモンドを叱りとばしていた。反感を抱いた2人は、イーノと共に強力な電波を発信。位置を探知したエンドラにアーガマを売り渡そうとする。ファに見つかりかけて途中で発信を取りやめた3人だが、一瞬だけ発された電波によってエンドラはアーガマの位置を補足。マシュマーは新型モビルスーツ「ハンマ・ハンマ」に乗り込み、護衛のガザCと共に出撃する。

 ラビアンローズ探索のためにアーガマから離れてコアファイターを飛ばしていたルーは、出撃してきたマシュマーたちのモビルスーツ隊に発見されてしまう。咄嗟にアーガマとは無関係の訓練兵を装ったルーは、エンドラの新兵であるグレミー・トトによってエンドラに連行される。

 マシュマーたちの接近を探知したアーガマでは、ブライトたちがZガンダムを出撃させようとしていた。頼りないアーガマのバックアップに呆れたジュドーは出撃を渋るが、ブライトとアストナージの説得に応じて渋々出撃することに。が、出撃時にビームライフルのエネルギーパックを忘れてしまう。

 大量のデブリの中でマシュマーの部隊と接敵するジュドーのZガンダム。しかしビームライフルが弾切れになってしまい、ジュドーはZガンダムの手の甲から射出できるダミー隕石を利用して戦う。ダミー隕石と間違えて本物の隕石に突っ込んだガザCたちは次々に撃墜され、マシュマーとジュドーは1対1の戦いに臨むことに。

 そんな戦いの最中、あくまで嘘をつき続けていたルーは、グレミーの好意で搭乗していたコアファイターごと外に運び出される。その移動中にハンマ・ハンマと戦うZガンダムを目撃したルーは、グレミーのガザCから離れ、機銃で損傷を与える。

 ジュドーのZガンダムをあと一歩のところまで追い詰めたマシュマーだったが、ダミー隕石の破裂によって機体のコントロールを失い、Zガンダムによってハンマ・ハンマの腕部を破壊された。去り際に吐かれた「アーガマには協力者がいる」というマシュマーの捨て台詞を気にするジュドーだったが、ルーと言い合いをしているうちにラビアンローズを発見。アーガマは合流に成功する。

 冒頭からやたらと入るジュドーのナレーションに「『ZZ』ってこんなんだったっけ……?」とちょっと違和感を感じる第9話。タイトルから分かる通り、とうとうシャングリラを離れて宇宙に乗り出したアーガマと、それを追うマシュマーのエンドラの追撃戦を描いた回である。

 内容的にはこれまでと同様のギャグっぽいタッチでまとめられており、特にエンドラの艦内に連行されたルーがひたすら白々しいウソをつき続けるシーンは今見てもなかなか面白い。「活発で男勝りだが、愛嬌があって機転も効き、パイロットとしても技量がある」というルーは、初代にも『Z』にもあまりいないタイプの女性キャラクターであり、『ZZ』が目指していたであろう明るく軽い作風を象徴しているようだ。

 また、グレミー・トトがこの回で初登場している点も見逃せない。後にストーリーを大きくかき回すことなるグレミーだが、この時点ではまだマシュマー麾下の新兵であり、このアーガマ追撃戦が初の実戦である。ルーに対する惚れ込みぶりなども初々しく、当初はギャグっぽいキャラクターとして設定されていた様子が窺える。

 今回のキーアイテムであるダミーバルーン製造装置もけっこう謎だ。バルーンでできた隕石やモビルスーツで敵を撹乱したり罠を仕掛けたりするダミーバルーン自体は、ガンダムシリーズの定番アイテムであり『Z』以降さまざまな作品に登場した。が、その製造工程が映ることはほとんどなく、この回で登場したダミーバルーン製造装置は割とレアである。

 しかしその製造方法はあんまりしっかり考証がありそうな感じにも見えず、ボタン一発でけっこう複雑な「コロニーの残骸のバルーン」も製造できていたりする。いきなりバルーンができてくる一連のシーンには「これはこういうものなんで、あんまりうるさいことを言わずに見てくださいね」という空気が漂っており、初代ガンダムが大気圏突入時に股間から出していた謎のシートなどと同じ匂いがする。

 そんなダミーバルーンだが、戦闘時のスリルを演出する道具としてちゃんと機能しているのはさすがである。今回はジュドーがうっかり忘れたビームライフルのエネルギーパックを補う装備として登場し、実物の隕石とダミーとの区別をつかなくさせて隕石にガザCを突っ込ませ、辛くもジュドーは勝利した。ガンダムシリーズは、毎回毎回「敵のゲストメカが出てきてビームライフルを撃ちあって勝つ」という流れを繰り返すと視聴者が飽きてしまうという課題を背負っており、今回のダミー隕石を使った戦闘もこの課題を乗り越えるために生み出されたアイデアだろう。

 もうひとつ印象的だったのが、実戦での厳しい態度を見せたブライト、そして戦闘時のアーガマの殺伐とした雰囲気である。

 冒頭、軍艦にクルーとして搭乗したにも関わらず、いまだに不真面目な態度のままなビーチャとモンドを、ブライトは正面から叱責する。また、艦内をふらふらしていたイーノが、なにかしらの物資(弾薬だろうか?)を輸送中のクルーに叱り飛ばされるなど、この回ではシャングリラからアーガマに乗った少年たちが怒られるシーンが盛り込まれている。

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