『るろうに剣心』エヴァ初号機と巨神兵モデルの敵キャラがいたのは本当?

 和月伸宏の名作漫画『るろうに剣心』の単行本には、「登場人物制作秘話」というおまけページが付いている。それを見ると和月がいかにしてキャラクターをデザインしていったのかがわかるし、当時の和月のマイブームまでわかるので、ファンには堪らないページになっている。

 さて、『るろうに剣心』の登場人物には様々なモデルがいるが、『風の谷のナウシカ』の巨神兵と、『新世紀エヴァンゲリオン』のエヴァ初号機をモデルにデザインされたキャラクターがいるのをご存じだろうか。エヴァ初号機、そんなメカみたいなキャラクターなんていたかな、と思った人もいるかもしれないが、そう、あの強敵である。

 志々雄一味の十本刀で最大のキャラ、不二だ。和月によれば、まず発想の源泉が巨神兵であるという。それは和月が十本刀のキャラのアイディアを練っていた時に、ちょうど金曜ロードショーで『風の谷のナウシカ』が放送されたためである。巨人を出すアイディアはここからきているようだ。

 そして、デザインのモチーフはエヴァ初号機である。それはデザインを見れば一目でわかるだろう。しかし、決定までには紆余曲折があったようで、当初は和月が好んだエヴァ弐号機をモデルにしていたらしい。ところが、アシスタントの間からあまりにデザインが似すぎていると意見が出て、没になってしまったのだ。

 そんな和月のピンチを救ったのが、アシスタントにして大御所漫画家の武井宏之であった。エヴァ初号機をベースに、ドクロのエッセンスを入れたデザインを提案。あとは和月がアレンジを加えて、完成したのが現在の不二のデザインである。武井といえば『シャーマンキング』で見せた優れたデザインセンスに定評があるが、和月の下でもその凄みが発揮されている。

 さらに、不二の素顔は和月の師匠にあたる、これまた大御所漫画家の小畑健の『魔神冒険譚ランプ・ランプ』のドグラマグラがモデルなのだ。不二は、いわば大物漫画家同士の師弟の競作であり、師弟愛の結晶が生んだキャラクターと考えることができる。

 この制作秘話が明かされているのは単行本(ジャンプコミックス)の15巻である。志々雄一味の十本刀との戦いの真っただ中であり、ファンには大人気の比古清十郎も登場する。比古が不二を相手し、飛天御剣流の九頭龍閃で見事に倒すのだが、その場面は『るろうに剣心』でも屈指のカッコ良さだと思う。ぜひ単行本を手にしてほしい。

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