『再生のウズメ』『宇宙の音楽』『嘘の子供』……漫画ライター・ちゃんめい厳選! 3月のおすすめ新刊漫画
『アナトミア ー解剖してわかったことだが、人間は必ず死ぬようにできているー』高城玲
15世紀末のミラノ公国を舞台に、“人体解剖”に魅入られた若き外科医と画家の数奇な運命を描いた本作。
外科医のトトは、15世紀末では当たり前であった瀉血や焼灼などの苦痛をともなう治療方法に疑問を抱いていた。ある日、仕事の研究のために死体を持ち帰ろうとしていたら、「作品を描くために人体を解剖したい」と言う風変わりな画家・レニーと出会う。
人体解剖によって紡がれる、医学と芸術をめぐる進化の物語。読み応えのある歴史ロマン系漫画でありながら、当たり前となっているルールや理への違和感に目を背けず、真正面から向き合った人達が世界を変えてきたのだと......新年度がスタートする今にふさわしい、思わず背筋が伸びる作品だ。
『死んでも恋は演じない』Jicco / 相川有
入れ替わりがテーマのミステリアスラブ『死んでも恋は演じない』。1巻完結なのに、コメディ・シリアス・恋愛とあらゆる要素がぎゅっと凝縮された一作だ。
定食屋でアルバイトをするごく普通の少女、灰谷砂羽。そして、そんな彼女に密かに恋心を抱き、じっと見つめる一人の青年・九嶋景都。実は大スターである景都、だからこそこの恋は一方的かつ秘密の恋として終わるはずだった。しかし、ある日事故に巻き込まれそうになった砂羽を景都が助けたことをきかっけに、二人の中身が入れ替わってしまう。
大好きだった砂羽と入れ替わって喜びすら感じる景都。一方の景都は大スターと入れ替わってしまったのだから、本人を演じるだけではなく、彼の俳優業......つまりさらに演技力が必要とされる世にも奇妙で難解な“入れ替わり”に戸惑いを隠せない。
入れ替わり系のセオリーとも言えるドタバタしたコメディ要素はもちろん、景都が俳優としての才能を開花させていくにつれて、蘇る前世の記憶。入れ替わりと前世という2重の設定が複雑に絡まり合う、重厚なラブストーリーとなっている。1巻完結で満足できる作品をお探しの方にぜひおすすめしたい。