ガーシーはいかにしてドバイで仲間を作ったのかーー元・朝日新聞記者のルポの問いかけ

 元・朝日新聞ドバイ支局長のジャーナリスト伊藤喜之が、300日に渡ってドバイ在住のガーシーこと東谷義和を取材し、『ガーシーCH』立ち上げの経緯やその人となりに迫った書籍『悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味』(講談社+α新書)が、3月17日に発売された。

 ガーシーは2022年7月の参院選当選以来、国会への欠席を続けた結果として3月15日の参院本会議で除名処分となっており、警視庁は著名人ら対して脅迫を行ったなどとして逮捕状を請求している。そんな最中に刊行された本書は、ガーシーがギャンブル依存症のために「BTSに会わせる詐欺」に手を染めたこと、太陽光発電システムを販売する会社『エステート24ホールディングス』の経営者である秋田新太郎の手引きでドバイへと渡ったこと、借金を返すために秋田新太郎のアドバイスで『ガーシーCH』を始めたことなどが詳細に記された一冊だ。

 中でも注目したいのは、FC2創業者の高橋理洋や、インフルエンサーマーケティングで脚光を浴びネオヒルズ族と呼ばれた久積篤史、元大阪府警の動画制作者である池田俊輔、元Fear, and Loathing in Las Vegasのギタリストで後にガーシーの公設第一秘書となった墨谷俊といった「ガーシー一味」との交友関係が、実名で書かれていることだ。本書自体はいわゆる暴露本ではなく、ガーシー一味は著者に対して協力的であるため、その証言はガーシー側に寄り添った部分が目立つが、しかし彼ら「手負いの者たち」特有の価値観を知るのに本書ほど打ってつけの資料はないだろう。

 また、ガーシーの人となりが周囲の人々の証言のみならず、本人の弁からも伝わってくるのもポイントだ。ガーシー自身の「たとえば、小さいころからの自分の親友がヤクザになった。それで友達をやめるのか、それはおかしいやろっていうことですよ。友達は友達だから」という言葉に象徴されるように、ガーシーは友人になった相手を大事にするタイプであり、知人のスキャンダルを暴露するガーシーのイメージとは異なる側面も見えてくる。ガーシーを慕う人物は多く、そのコミュニケーション能力の高さが伺えるほか、その妹や母親も『ガーシーCH』の是非はさておき、信頼を寄せているようだ。

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