周囲が気づかなければ凡人だった? 『ブルーロック』凪誠士郎から矢吹丈、小早川瀬那まで“見つかった天才キャラ”たち

 人気沸騰中の“史上最もイカれたサッカー漫画”『ブルーロック』の最新23巻とともに、スピンオフ作品『ブルーロック -EPISODE 凪-』の2巻が発売された。『-EPISODE 凪-』は天才・凪 誠士郎と、その才能を見出し、ともに世界を目指す御影玲王の物語だ。

 同作の冒頭は、こんな言葉から始まる。<『天才』とは ひとりでは決して『天才』たり得ない生き物である 見つける者がいて初めて その輪郭を成すーーー>。もともとサッカーに興味がなかった凪 誠士郎と、その才能に惚れ込んだ御影玲王の関係性を象徴する言葉だ。

 この関係は、多くのスポーツ漫画に見られる。たとえば、ボクシング漫画の金字塔『あしたのジョー』。主人公の矢吹丈(ジョー)は、地元暴力団との乱闘のなかで、丹下段平に天性のボクシングセンスを見出されていなければ、栄光とともに、笑みを浮かべながらリングの上で人生の幕を閉じることはなかった。同じくボクシング漫画なら、天性のハードパンチャー・幕之内一歩(『はじめの一歩』)も、いじめられている現場に遭遇した鷹村守に才能を見出され、鴨川源二の指導を受け始めたのが、ボクシング人生の始まりだった。その鷹村自身も、鴨川会長に見出された天才だ。

 「天才」と聞いて思い出すキャラクターといえば、『SLAM DUNK』の主人公・桜木花道もそうだ。もともとバスケットボールに関心のなかった花道がインターハイで旋風を巻き起こす選手になるほどまでに本気になれたのは、赤木晴子がその身体能力に“救世主”としての資質を見出し、チームメイトたちが「技術」や「経験」を度外視して、必要な戦力として花道を認めていったからだ。

 自転車競技・ロードレースをテーマとする人気漫画『弱虫ペダル』の主人公・小野田坂道も、無自覚な天才だった。漫画やアニメへの愛が高じて、千葉の地元と東京・秋葉原を“ママチャリ”で往復してきた恐るべき脚力は、本気で競技に打ち込む今泉俊輔や鳴子章吉に見出されなければ、日の目を見ることはなかっただろう。近いキャラクターでは、大ヒットアメフト漫画『アイシールド21』の小早川瀬那がいる。もともとは主務として入ったアメフト部だったが、不良から逃げる快速を見た蛭魔妖一に見染められ、強制的に選手にされたのが栄光への第一歩だった。

 『ブルーロック』と同様に現在人気を高めているサッカー漫画『アオアシ』の主人公・青井葦人も、才能を秘めたままプロサッカー選手への道を諦めたかもしれないキャラクターだ。中学時代、卓越した選手ではあったものの、荒削りでチームとして結果も出せなかったなかで、Jリーグの強豪「東京シティ・エスペリオン」のユースチームで監督を務める福田達也にその異才を見抜かれ、瞬く間に飛躍していった。

 こうした物語は枚挙にいとまがないが、現実に置き換えて考えると、見出されなかったためにドラマにならなかった才能が、どれほどあっただろうか。凪 誠士郎がサッカーをしていなかったら、桜木花道がバスケをしていなかったら……と考えると、それはそれで面白い物語になりそうだが、“その道”に引き込んだキャラクターの功績も覚えておきたいところだ。

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