カラテカ入江、清掃会社「ピカピカ」代表としての現在地 闇営業騒動から4年を経て気づく「味方」の大切さ

 2019年、闇営業騒動で吉本興業を契約解除となった、カラテカの入江慎也氏。「友だち5000人芸人」として人脈を武器に仕事の幅を広げていた矢先、表舞台から突然姿を消すことになってしまった。 

 それから約4年、現在は清掃会社「ピカピカ」の社長としてセカンドキャリアを歩みだした入江氏が2023年2月に書籍『信用』(新潮社)を出版。芸人を辞めることになった当時から現在まで、この4年間に起きたことや心の変遷を著した。 

 夢と信用を同時に失い、そこからどのように前を向いて生きてきたのか。入江氏が書籍で伝えたいことや現在の心境について語るインタビューをお届けする。(中野亜沙子) 

「どん底」で腐っている誰かに届いたら 


ーー本書の執筆経緯を教えてください。 

入江慎也(以下、入江):吉本興業を契約解除になってから今まで、僕は一連の騒動に対して何も話してないんですよね。それもあって世間の方は、宮迫さんや(ロンドンブーツ1号2号の)亮さんとの関係がどうなっているのか、怒られたり縁を切られたりしたのかなと思っている人も結構いると思うんです。 

 でも実際はそうじゃなく、吉本の先輩方にずっと助けられてきた。「人はひとりじゃ生きていけない」と痛感した4年でした。世の中には、僕みたいに失敗して腐ってしまい「人生どうにでもなれ」と思って間違った方向に進む人もいると思うんです。僕の口から言うのが正しいかどうかはわからないですけど、「いくらでもリスタートを切れるんだ」というのをわかってもらえたらと思って書きました。 

 いろんな失敗をして落ち込んでいる人から「なんで前に進めたんですか」と相談をもらうことがあるんですけど、僕の場合は「間違いなく周りの皆さんのおかげです」と答えてます。自分ひとりの力じゃ絶対ムリだったんで。 

ーー本書では同期・先輩芸人の方からの言葉が詳細に綴られています。今その中でも特に印象に残っている言葉はありますか? 

入江:2019年に吉本をクビになってすぐ相方の矢部に言われたことですね。「地に足をつけて、がんばっていったらいいと思う」と言われたのが一番印象に残っています。 

ーー相方の矢部太郎さんとは芸人を辞めた後の方がお話するようになったんですよね。 

入江:そうですね。芸人時代の最後の2年くらいは、矢部は新潮社さんから『大家さんと僕』という漫画を出版して先生と呼ばれたりしてましたし、僕は人脈に関する講演会の調子がよかったので、それぞれ自分の道を見つけたかなと思ってたんですよね。だからお互いの仕事にはあまり干渉していなくて。会うのは月に1回カラテカのライブをやる時くらいでした。 

 だから吉本を契約解除になってからのほうが話すことは増えましたね。近況報告で年2回は必ず会うことにしていて。つい先日も「出版したから飯食おうか」と話していました。 

ーーある意味、今のほうが絆が深まっている? 

入江:んー、絆ともちょっと違うんですよね。僕に対して、常に冷静に話をしてくれる相手でしょうか。 

ーー「闇営業」が問題になった当時を振り返ると、今はどう感じますか? 

入江:本にも細かく書いていますが、「軽率だった」ということに尽きると思います。紹介した人がそのことで問題が起きたらどうしようとか、その方のご家族や相方、所属事務所、お仕事を一緒にされているスタッフさんたちへの影響なんて考えてなかった。あの時は目先のことばかりを考えていたんだと思います。

ーーそのような経験と反省が「信用」というタイトルにつながるのでしょうか? 

入江:やはり今回のターニングポイントは信用を失ったことです。今まで培ってきたものがこんなに一瞬でなくなるんだと痛感しました。信用を取り戻すのはいまでも大変です。世の中は何でも信用で成り立ってるじゃないですか。今やっている清掃の仕事も信用がなければ続けられませんから。 

芸能界に戻るよりも優先したいこと

ーー本書では「清掃業に前向きに取り組みつつも大好きだった芸人の生活に戻れないんだという辛さも同時に感じている」という正直な気持ちを打ちあけています。芸能界から退いてもしばらくは芸人に戻りたい気持ちが強かったのでしょうか? 

入江:まったく考えていませんでした。芸人に戻れるかどうかなんて想像できないくらいの衝撃だったので。とにかく生きることが怖かった。 

ーーそこから前向きになれた一番の要因は何でしょうか。 

入江:何でしょう……。でも、人生って続くじゃないですか。本音で言うと、「このまま終わりたくない」と思ったのが一番強いですかね。このまま終わっちゃったら、悔しいなってある時から思うようになったんです。

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