『SLAM DUNK』NBAで通用するのは流川や沢北より三井寿? 連載時から飛躍的に高まった「シューターの価値」
大ヒット上映中のアニメーション映画『THE FIRST SLAM DUNK』。宮城リョータ視点の物語になったことで驚きを広げたが、作中屈指の人気キャラクター・三井寿の新エピソードが追加されており、こちらもファンを喜ばせている。直近では、朝の情報番組で名前の由来にもなった福岡県三井郡の日本酒「三井(みい)の寿」が紹介され、SNSでトレンド入りするなど話題になった。
具体的なネタバレは控えるが、『THE FIRST SLAM DUNK』には主にリョータについて、原作にない“進路”を描くエピソードが含まれていた。「週刊少年ジャンプ」での連載終了後、ファンは続編を淡く期待しながら、選手たちがどんな未来を歩んでいくのか口々に語り合ったが、世界最高峰の舞台と言える「NBAへの挑戦」を考えたとき、作中でもアメリカ留学について言及している流川楓、沢北栄治の両エースが主役だったと言える。ただ現在のバスケットボールシーンを考えると、実は三井寿の方が可能性があるのではないか、と思えるのだ。
三井は高校1年で左膝を負傷した後、2年間、不良として過ごしていたブランク期間があるが、中学時代は神奈川県大会のMVPに輝くなど、高いバスケットボールセンスを持ったスタープレイヤーだった。そして復帰するや否やシューターとして覚醒し、全国トップの実力を持つ山王工業戦で、原作で確認できる限りでも25点を奪い、勝利の立役者となった。ブランクが解消され、スタミナやクイックネスが戻ってくれば、日本では手がつけられない存在になりそうだ。
そして現在のバスケットボール界では、『SLAM DUNK』が連載されていた1990年代と比較して、シューターの価値が飛躍的に上がっている。現実のバスケに詳しくない方に説明するとしたら、戦術的に、赤木剛憲や魚住純のようなセンターポジションの選手にも一定程度、3ポイントシュートが期待されるような環境だ。三井のようなシューターは“飛び道具”ではなく、重要な戦力としてカウントされる。
流川や沢北は日本においては飛び抜けたフィジカルを持っており、おそらく本人たちも自覚しているように、アメリカですぐに周囲を圧倒するような活躍ができるとは考えづらい。その点、外からのシュートは相手のフィジカルに左右されづらく、実際、先の東京オリンピックで銀メダルを獲得したバスケットボール女子日本代表は驚異的なシュート力を大きな武器として、体格差をものともせず、この快挙を成し遂げている。少なくともオフェンスの面では、三井は流川や沢北のようなスコアラーに劣らず、むしろ高く評価すべき強みを持っているということだ。
現実のNBAを見てみると、現在、ブルックリン・ネッツで活躍中の渡邊雄太は、シューターとして開花したことで本契約を勝ち取ったいいお手本だ。ただし、渡邊は203cmと高身長でディフェンス能力が高く、いわゆる「3&D」プレイヤーというトレンドに乗っている。ポジション的にも、三井が目指すべき理想像は歴代最高シューターで、戦術のあり方すら変えてしまったステフィン・カリーであり、3Pシュートが決まりだすと止まらないクレイ・トンプソンになるだろう。
そんな想像を広げながら応援したい日本人選手がいる。現在、米ネブラスカ大学で活躍し、NBAへの進出を狙う“和製ステフィン・カリー”富永啓生だ。直近の4試合連続で20点オーバーという恐るべき得点力で、広いシュートレンジと正確性が現地のファンの心を捉えている。日本人シューターの価値を証明し続けている富永の奮闘を応援しつつ、「三井寿や神宗一郎がNBAで通用するか」という想像を広げてみてはいかがだろうか。