コムドットは出版業界でも勝者に ベストセラーを連発する“才能”と“ファンとの関係性”を考える
人気YouTuberグループ・コムドットの2nd写真集『JOURNEY』のプレミアム版が11月25日、通常版(12月2日発売)に先立ってリリースされた。
プレミアム版は初回受注生産限定の「豪華装丁版」で、9月19日まで予約が受け付けられていた。通常版とは写真・構成が異なり、カレンダーやポスターが同梱される。通常版が税込1980円なのに対して、プレミアム版は11000円。受注生産の限定版であり、ファンの年齢層を考えても決して手頃な金額ではないが、25日12時現在、Amazon「写真」ランキングで6位、「本」全体のランキングで201位にランクインしており、SNSでも手元に届いたことをよろこぶファンの声が多く聞かれている。
チャンネル登録者数が376万人に及ぶコムドットは、YouTubeだけでなく、出版業界を席巻していると言っていい。2021年12月2日に発売された1st写真集『TRACE』は、メンバー5人の特別カバーバージョンも含めて、累計発行部数が33万部を突破。男性グループ写真集の累積売上部数で歴代1位になったことが話題になり、日販調べによる「2022年上半期ベストセラー」の写真集部門でも、当然トップになっている。そもそも男性写真集がベストセラーランキングの1位になることが珍しく、第2位『生田絵梨花 乃木坂 46 卒業記念メモリアルブック カノン』以下を「大きく引き離した」と、日販は伝えた。
また、2020年8月に刊行されたリーダー・やまとのエッセイ『聖域』は、3ヶ月で40万部を超えるベストセラーに。今年8月に発売されたエッセイ第二弾『アイドル2.0』は予約好調から初版15万部(※『聖域』は5万部だった)となり、現在もAmazonのタレント本ランキングで10位前後をキープするなど、順調に売り上げを伸ばしているようだ。
エッセイが40万部売れ、同時に写真集が30万部売れるタレントは、なかなか思い浮かばない。その言葉に耳を傾け、大判の本で写真を楽しみたいという熱烈なファンを、これだけの規模で抱える存在として考えられるのは、競技シーンから退いた後も関連本が続々出版され、ベストセラーになっているスーパースター・羽生結弦くらいだろうか。パブリックイメージは対照的かもしれないが、どちらも好況とは言い難い出版シーンに、大きなインパクトを与えている。
多くのファン/フォロワーを抱えるインフルエンサーの本が、すべて売れているわけではない。YouTuberの本で直近のベストセラーといえば、ヒカルが9月30日に刊行した初のエッセイ『心配すんな。全部上手くいく。』が1週間で25万部を突破したことが話題になった。
ヒカルとコムドット(主にやまと)の共通点を探るとすれば、「ビッグマウス/上昇志向」が挙げられる。お互い、言葉は違えど「YouTuberとしてトップを獲る」ということを明言しており、批判的な声もつきまとうが、「ついてこい」とファンを鼓舞するタレント性を持っている。“オラオラ系”と言い換えることもできそうだが、書籍の売上で見れば数十万、動画の視聴者数でいえば数百万という規模で、そうした関係が作れてしまうのは才能だろう。コムドットファンには「コムレンジャー」という愛称があり、横の結束も強い。
本の売り上げから考えると、「トップを狙う彼らを支えたい」というファンの意欲は、一般知名度では明らかに差のある、地上波で活躍するアイドルすら上回っていると見ることもできる。日々の動画活動による単純接触効果、芸能人より身近な存在感、チャンネル登録者数や動画再生回数という、わかりやすい“成功”の指標など、YouTuberの強みを存分に活かしながら、ファンとともに成り上がっていくコムドット。ベストセラーが確定しているような状況で、メンバーの単著などの展開にも期待がかかるところだ。