漫画原作者・武論尊の“意外”な一面? 地元に多額の寄付&あだち充とタッグを組んだ作品も

 漫画原作者・武論尊氏が、以前から展開している漫画塾の拠点施設を出身地の長野県佐久市出身に建設することを発表した。返済の必要がない奨学金制度の原資にと、武論尊氏は同市に対して2017年、2022年に4億円ずつの寄付を行なっており、地元愛と漫画愛に溢れたレジェンドとして尊敬を集めている。

 「武論尊」といえば、『北斗の拳』をはじめとするハードボイルドな作風で知られ、アウトローを描いた作品も少なくない。作家名からもソフトとは言い難い印象があるかもしれないが、銀杏社によるウェブメディア「漫画街」のインタビュー記事「原作者・武論尊、もしくは史村翔」によれば、実は残酷/グロテスクなシーンは好きではなく、『北斗の拳』のテレビアニメ化に際しては、お茶の間に流れることを考慮し、血が飛び散るようなシーンをあえてシルエットにする、血の色を消すなど、かなり注文したという。豪快に見えて、配慮の人に思える。

 漫画原作においては、職人として仕事に打ち込む。「原作:武論尊」作品といえば、作画を担当するのは「原哲夫」や「池上遼一」のイメージが強く、『ベルセルク』の三浦建太郎氏(「月刊アニマルハウス」で『王狼』/『王狼伝』を連載)など、劇画的な作風の漫画家が思い浮かぶが、実は『冬物語』『部屋においでよ』などで知られる原秀則や、『タッチ』のあだち充など、柔らかな作風の漫画家ともタッグを組んでいる。

 武論尊×あだち充という、レジェンドタッグの作品はどんなものだったのか。「週刊少年サンデー」の2002年36・37合併号に巻頭カラーで掲載された読切作品で、タイトルは『白い夏』。期待を裏切らない、ふたりの特長がしっかり出た作品で、「高校野球」と「アウトロー/ハードボイルド」が共存している。高校時代、野球部でともに汗を流した3人の男たちの熱く、切ない物語だ。こちらはあだち充の短編集『ショート・プログラム』3巻に収録されており、電子化もされているため、いまも読むことができる。

 後進の育成にも力を注ぐ、漫画界の功労者・武論尊氏。この機会に、意外にも思える過去の仕事を振り返ってみてはいかがだろう。

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