『SEX』35周年展レポート 原画がなんと200枚以上展示! 上條淳士からの特別メッセージも
現在、東京・吉祥寺のリベストギャラリー創にて、漫画家・上條淳士の個展が開催中だ(2022年11月29日[火]まで)。
同展は上條の代表作の1つ、『SEX』の連載開始35周年を記念してのものだが、会場に展示されているアナログ原画の数々を目にすれば、あらためて(デジタルによる作画とはひと味ちがう)“手描きの迫力”を感じることができるだろう。
上條淳士の『SEX』は、1988年から1992年まで「ヤングサンデー」(小学館)にて連載された、アクション・コミックの傑作である。主人公は、ユキ、カホ、ナツという3人の若者であり、物語は、この3人が、福生、横須賀、沖縄という“基地の街”を転々とし、法やモラル、既成概念などにとらわれることなく、自由に生きていく姿が描かれる。
今回の個展では、その『SEX』から厳選された原画がなんと200枚以上も展示されており、白と黒のコントラストが美しい上條の絵がギャラリーの壁3面を埋め尽くしている様子は圧巻という他ない。また、一般的に漫画のアナログ原画では、白と黒の中間の色(グレー)はスクリーントーンを貼って表現することが多いのだが、そのトーン・ワークの極致ともいえる高度な“技”の数々を見ることもできるだろう。
上條淳士先生から特別メッセージ
さて、今回、「リアルサウンド ブック」の読者の皆さんに、上條淳士先生からメッセージをいただいたので、それを最後に掲載したい。
『SEX』が連載開始から今年で35周年になるので、吉祥寺のリベストギャラリー創で35周年展を開催しています。
実際に個展会場でお客さまと接していると分かりますが、『SEX』のファンと『To-y』のファンは完全に同じという訳ではなく、少し違いますね。
さらに言うと「ニヤになりたかった」という方と「カホになりたかった」という方はもっと違います(笑)。
ルッキズムや優劣という意味ではありませんよ。
これは作品の構造上、『To-y』でニヤのポジションに当たるキャラクターが『SEX』のカホではないからなんです。
ニヤはユキ。カホはトーイに当たります。
ぼくのなかでは『To-y』はストーリー物。
『SEX』はキャラクター物と捉えています。
トーイやニヤは物語の上で必要なキャラクターですし、時代をパッケージする目的もありました。なので40代、50代のトーイたちも存在します。
一方でユキたちは今もあのユキ、カホ、ナツのまま現れるような気がしませんか?
これは物語よりもキャラクターの方が強く出ているせいかもしれません。例えば『ルパン三世』のような。
これは狙っていたわけではなく、結果的にそうなった感じです。
よかったら個展会場に遊びに来てください。
200枚超の漫画原稿を展示しています。
「よ。久しぶり。」と声をかけてくれれば、吉祥寺の街で彼らに出会えるかもしれませんよ。
――上條淳士
吉祥寺のリベストギャラリー創のサイト