ブレイキングダウン成功の影に朝倉未来の“プロデュース能力” 「王道・工夫・感情・ファスト」4つのメソッドが秘訣?

 格闘家/YouTuberの朝倉未来がプロデュースする「Breaking Down 6」(ブレイキングダウン)が11月3日、開催された。いまネットを賑わせている「10人ニキ」を始め、炎上系YouTuberやお騒がせタレントも参戦する、1分間限定の格闘技大会で、有料となるペイ・パー・ビューでの配信でありながら、一夜明けた4日も話題になり続けている。本稿では、同イベントでの朝倉未来の立ち振る舞いや、著書『強者の流儀』(KADOKAWA)等で明かされている本人の哲学をもとに、そのプロデュース能力について考察したい。

 「Breaking Down 6」では、朝倉が名を上げたアマチュア総合格闘技大会『THE OUTSIDER』と、『Breakingdown』のスターが対戦する“対抗戦”がひとつの目玉になっており、格闘技ファンからしても見応えのある試合は多い。しかし、過去に失敗を重ねていたり、さまざまな事情で鼻つまみ者になってしまっているアマチュアたちを「見せ物」にしている側面があり、賛否両論が渦巻いているのも事実だ。

BreakingDown6 当日公開計量

 一方で、「格闘技イベントとしてどうなのか」ということは横に置くと、事前・事後の話題の大きさからして、「格闘技人気/認知の拡大」を目的に掲げてYouTubeで活動してきた朝倉の手腕は、確かであると言わざるを得ない。

 各対戦カードのドラマ、因縁を煽りに煽り、たった1分で決着をつけさせる。90年代に格闘技ブームを巻き起こした「K-1」や「PRIDE」においても、選手たちが持つドラマにフォーカスしたことが人気のポイントになったが、いわばその面白さを凝縮し、短期決戦の早回しで、今回で言えば実に32試合分の物語を見せるという仕組みを作り上げた。朝倉は第一試合が始まる前、「楽しみとしか言いようがない。オーディションからの流れで楽しみにしている方も多いと思うので、早く試合が見たい」とコメントしており、大荒れでニュースにもなったオーディションからのドラマを強調している。

 前出の『強者の流儀』を読むと、朝倉が企画を立てる上での発想は王道だ。例えば、「定番の企画をそのままなぞるのではなく、工夫を加えること」「見る人の感情を動かすこと」。「K-1」や「PRIDE」だけでなく、「ガチンコ・ファイトクラブ」のようなプロレス的トラブルも含めた鉄板の内容に、「1分間最強」という現代の潮流に即した「ファスト」要素を盛り込むという「工夫」をして、主にネガティブな内容で話題の人物たちを積極的に起用しながら、対立軸やひたむきな姿を見せて「ドラマを作る=感情を動かす」。その意味で、『Breakingdown』も“朝倉メソッド”が利いた企画だと言える。

 冒頭に「見せ物」という強い言葉を使ってしまったが、朝倉は何かの拍子に人生のレールを踏み外し、自分の力では消し去れないデジタルタトゥーを刻まれた人々、あるいは浮上のきっかけを掴めない人々に、自分自身が救われた格闘技を通じて、再起/奮起する場を提供しているようにも思える。

 この日、ゲストとして解説席を訪れた10人ニキとアドリブまさお(※前日の記者会見で、対戦予定の久保田覚に椅子で殴られ、欠場となった)に対して、朝倉は「ブライキングダウンが生んだ二人のスター。狙っていないお笑いを持っている」と盛り上げた。『強者の流儀』には、成功者の分析は大切だが、「全く同じことをやっても成功はできません」として、誰かをプロデュースするにしても“その人なりの演出”を考える必要があると書いている。実際、朝倉は勝者を過剰に持ち上げるでもなく、過去の失敗をバカにするでもなく、選手一人ひとりにフラットに目を配っている様子が印象的だ。自身が“競技者=演者”となる大会ではビッグマウスでドラマを作るが、プロデューサー・朝倉未来は大会中も言葉少なで目立たず、冷静に立ち振る舞っているのがわかる。

 そんななか、最後には“キング・オブ・アウトサイダー”啓之輔に煽られ、「僕は、いつでもいいですよ」としっかり“演者”としての役割も全うした朝倉未来。あまり堂々と人に言いたくない、下世話な好奇心にも思えるが、次回開催がまんまと楽しみになってしまった。

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