「MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店」閉店 売上減だけじゃない書店苦境の大きな原因

 2022年11月1日、丸善ジュンク堂書店(東京都中央区)は、「MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店」(東京都渋谷区)の閉店を公式サイトを通じて発表した。同店が入店する東急百貨店本店が営業終了することに伴う対応という。

 閉店は2023年1月31日を予定。それまでは、謝恩キャンペーンや各種フェアも実施する予定という。同店は2010年、丸善とジュンク堂がダブルネームで出店した第1号の店舗でもあった。12年の歴史に幕を下ろすことになり、ネット上でも残念がる利用者の声が数多く寄せられている。

 これまで書店の閉店といえば、地方の中小の個人経営の店が中心であった。百貨店本体の営業終了がきっかけとはいえ、安泰と思われていた都心の大型書店の閉店は、衝撃をもって迎えられている。

 Amazonなどのネットショッピングサイトとの競合にも晒されている大型書店は今後、どうなっていくのか。元大型書店の店長は、現状の課題をこう話す。

 「書店は元々薄利多売のビジネスです。本が売れて“多売”の時はよかったものの、本が売れない状況が続けば収益が悪化するのは明白でしょう。大型書店では、多くの本を取り揃えている分、在庫を抱えるリスクも大きいといえます」

 本は保管の仕方次第で、日焼けなどの劣化が進みやすい。豪華本の辞書や美術全集、専門書などの類は、大型書店ならではの品ぞろえと言えるが、何度も手に取られ、立ち読みされて、傷んだものが在庫されている例も少なくない。

  長期間の在庫は、貴重な本棚のスペースを割くことになるから、効率もよくない。とはいえ、来店客から問い合わせがあったにも関わらず、在庫をしていないとなれば、せっかくの販売機会を失うこともなる。

 以前であれば、在庫がない場合は書店経由で注文し、後日、受け取りにくるケースがほとんどだった。しかし、現在は書店に在庫がないとなれば、客はネットで注文してしまうだろう。書店は様々なジレンマを抱えている状況にある。

薄利多売ゆえに、このような悩みもある。

 「出版社への注目はいまだに電話やファックスが多いですし、返本などの事務作業も多く人件費がかさみます。最近では、現金支払いをする方が少なくなり、スマホ決済など電子マネーによる決済が増えました。カード会社などに支払う手数料も、経営に重くのしかかってくるんです」

 我々の暮らしに潤いを与えてくれる書店を、どのように守っていくのか。今後の大きな課題と言えそうだ。

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