『RECORD』『音盤紀行』『緑の歌』……色褪せないレコードの魅力を伝える漫画3選

『緑の歌』

 漫画雑誌『月刊コミックビーム』(KADOKAWA)で連載され、『音盤紀行』と同様に2022年5月にコミックス上下巻が発売された『緑の歌』。作者の出身地である台湾が物語の舞台となっている作品だ。

 村上春樹『海辺のカフカ』や岩井俊二『リリイ・シュシュのすべて』など、日本の文化に興味を抱く少女・緑。彼女は大学進学を期に台湾の都市・台北でひとり暮らしをはじめる。台北の地で出会った少年・南峻(ナンジュン)や同じ大学に通う友人と過ごしていくなか、緑は日本の文化や多くの人々に救われていく。

 コミックス1巻「[04] I Saw You, A Little Bit」にて緑は南峻の自宅を訪れ、アーティスト・はっぴいえんどのアルバム『風街ろまん』の楽曲をレコードを通じて耳にする。そのあと緑は同じアルバムを購入するため、南峻からもらったレコードショップの名刺を片手に日本へ行くことを決心する。アルバムを購入するために異国の地を訪れる旅は、音楽が形のある物体として存在しているからこそ生まれたものであろう。

また日本へ行こうとする緑に南峻は言葉を贈った。

いいと思ったアルバムのジャケットを頼りに選ぶだけ

試聴もできないしもっと言えばネットで評価を探すこともできない

70年代の音楽は70年代のスタイルで聴くんだ

思えば最近「ジャケ買い」といった言葉を耳にしなくなった。

 欲しいものを購入するために商品のレビューを調べ、音楽であれば試聴し、本であれば試し読みをしてから購入を決心して、通販サイトに配置されたボタンをクリックする。中身の一部を知り、いつでもどこでも買い物ができるようになった現代は、数十年前と比べ非常に便利な世の中になったと言えるだろう。

 1970年代ではどうだったのだろう。購入するためにショップへ足を運び、ときに中身を知らないまま、感性の赴くままに購入を決心する。前述した行動とは対照的な行為であるからこそ、レコードを始めとするアナログな媒体を購入して楽しむことの魅力は、便利になった現代において、より強調されているのだと感じる。

 

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