少年誌初のBL漫画『ババンババンバンバンパイア』作者が語る、“ブラッディ・ラブコメ”の作り方「人物相関図をぐちゃぐちゃにさせる」

テンポの良い会話劇、鍵は家族団欒と腐女子?!

ーーテンポの良い会話劇と言葉選びのセンスが、物語を一層盛り立てているように感じます。

奥嶋:家族団欒のシーンが好きなんですよ。家族みんな揃ってご飯を食べている時の、誰かが突っ込むわけでもなく、各々が自由に喋って笑っているみたいな。昭和の古き良き家族風景みたいなものですかね。会話のシーンはそんな家族団欒を意識して描いています。

ーー蘭ちゃんのセリフも最高ですよね。感情が乗っているというか、あの言葉選びが秀逸で目に留まります。

奥嶋:僕、Twitterとかで見かける腐女子の方の反応が大好きなんです。言葉の一つ一つに嘘がないというか、本当に良いと思っているんだろうなというのがすごく伝わってくる。だから、蘭ちゃんの言葉は腐女子の方を参考にさせていただいていますね。あと、妻がBTSが大好きなので、そこからも拾っています(笑)

ーー推しがいる人の情熱と蘭ちゃんがうまくリンクしたんですね。ちなみに、一番お気に入りのシーンはありますか?

奥嶋:吸血鬼とギャップのあるシーンが好きなので、蘭ちゃんが自転車を漕いでいるシーンですかね。飛んでいけば良いのにって。


ーー蘭ちゃんは日中外に出るために日焼け止めを塗りたくったり、ギャップのあるシーンが多いですよね。ついつい笑ってしまいます。

奥嶋:わざわざ宙にぶら下がって登場したりね(笑)。本人は至って本気でやっているんだけど、他の人がみたら笑っちゃう。“吸血鬼がこんなことしていたらアホらしいな”みたいなことは意識しています。でも蘭ちゃんの本当にかっこいいところも描きたいなって思っています。吸血鬼らしい一面とかね。

「人物相関図をぐちゃぐちゃにさせる」バババ流ラブコメの作り方

ーー蘭ちゃんと李仁くん一家。これだけでも充分濃いのに、篠塚先輩(通称:フランケン)やバンパイアハンターの坂本先生など、個性豊かなキャラクターがどんどん増えていきますよね。


奥嶋:まず、蘭ちゃんと李仁くん、葵ちゃんの三角関係を考えていて、李仁くん周辺でもう一人欲しいなと思ってフランケンを登場させました。蘭ちゃんと李仁くん、葵ちゃん、フランケン、坂本先生、あと3巻でもう一人新キャラが登場するんですけど、その新キャラを含めて6人までが当初構想していたキャラクターですね。

ーー新キャラが登場するんですね! さらに賑やかになりそうです。

奥嶋:人物相関図ってあるじゃないですか。誰が誰を好きとか、ここは両思いとか。その相関図が思っていたものと実際では全く違う! みたいに、人物相関図をぐちゃぐちゃにさせるというのは意識しています。だから、キャラクターがあともう一人いたら、ぐちゃぐちゃの人物相関図が完成するのかなと(笑)。

 ーーその手法はいつも取り入れられているのでしょうか?

奥嶋:『ババンババンバンバンパイア』で初めて取り入れました。今回ラブコメをやるって決めてから色々考えたんですけど、ラブコメってくっついたら終わりなんですよね。従来のラブコメや恋愛マンガでも、どうにかくっつけさせないようにと、色々なキャラクターが配置されているので、本作では自分が思っている以上に相関図はぐちゃぐちゃにするぞ! って意識しています。

ーー参考にされたラブコメ作品がありましたら教えてください。

奥嶋:『うる星やつら』とか、高橋留美子作品を目指しましょう! みたいなところからスタートしましたね。あと、矢沢あい先生の『ご近所物語』もキャラ配置とか参考にしています。好き同士だからすぐにくっついて終わりそうなのに、好きだと言わせない何かがあるじゃないですか。すぐハッピーエンドになりそうだけど、また何か問題が起きてる!みたいなところはかなり意識しています。

ーー最後に今後の見どころと読者へメッセージをお願いいたします。

奥嶋:見どころは、やっぱり蘭ちゃんが李仁くんの血を本当に吸うのかというところですよね。2人がどうなるのか、そして周りのキャラクターたちとどんな関係性になっているのか。ぜひ注目して見ていただきたいです。

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