『サマータイムレンダ』『子供はわかってあげない』『花と頬』 梅雨明けで読みたい“ひと夏の物語”たち
6月27日、九州南部・東海・関東甲信で例年よりも早い梅雨明けが報じられた。全国的に記録的な猛暑の傾向で、夏の到来を感じている人も多いだろう。
今年も夏がやってくる。熱中症に消費電力の問題など、気にかかることも少なくないが、本稿では人それぞれの物語が待っている「夏の日々」を思い浮かべ、楽しみになったり、背筋が冷たくなったりするような、ひと夏の物語を描いた漫画を紹介したい。
『サマータイムレンダ』
漫画アプリ「少年ジャンプ+」で連載された作品であり、累計1億3000万PVを誇った『サマータイムレンダ』。最終回が公開されたと同時にアニメ化や実写化が発表され、大きな話題を呼んだ作品だ。
和歌山県の海峡に浮かぶ離島「日都ヶ島」を訪れた網代慎平。彼は海で事故死した幼馴染・小舟潮の葬儀に参列するため2年ぶりにこの島へ帰ってくることとなった。慎平は地元の友人から潮の死に他殺の可能性があること、そして「自分にそっくりな“影”を見た者は死ぬ」という噂を耳にする。
不安が渦巻くなか慎平は“影”に遭遇し射殺されてしまう。しかし目が覚めると日都ヶ島に上陸する直前の時間に戻されていた。死がトリガーとなるタイムリープを重ねるなかで潮の死の真相を解明しようとする。
ひと夏の数日間を何度も繰り返しながら物語が進む本作は、突如として登場人物が命を落としてしまうシーンが数多く存在する。常に死と隣り合わせという状況から覚える緊張感は、夏の日に耳にする怪談話にも似た感覚を覚えることができるだろう。
『子供はわかってあげない』
『モーニング』(講談社)2014年14号から2014年35号まで連載された『子供はわかってあげない』。連載が終了したあとも注目を集め「マンガ大賞2015」では2位に選ばれた。2021年には実写映画化もされている。
高校2年生の女の子・朔田美波は学校の屋上でアニメ『魔法左官少女バッファローKOTEKO』の絵を描く書道部の同級生・門司昭平と出会う。その日以降もふたりの交流はつづくなか、朔田は門司の家で幼い頃に別れた実の父親の手がかりを見つける。朔田は自身の父親を見つけるために、そして門司は自宅へ帰ってこない朔田を探す旅に出る。
高校生のふたりによるボーイミーツガール(もしくはガールミーツボーイ)として物語が展開する本作であるが、門司の兄である探偵・門司明大がとある事件の犯人を捜す推理作品としての側面もあり、登場人物たちの家族が関係を深める側面も多く存在する。ゆえに作中では母親の思いを知る息子の夏、娘を思う父親としての夏など、“子供”と“大人”それぞれの視点で映る各々の夏の物語が描かれる。
もちろんボーイミーツガール的作品として、少年少女によって綴られる夏の1ページは多くの人に甘酸っぱさを与えるものであろう。それぞれのひと夏が描かれる本作は年齢や境遇など、読む人やタイミングによって心が大きく動くシーンが変化する作品であるはずだ。